ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 「ブラジルのニクソン」=ニューヨーカー誌がジウマ語る
3月17日の官房長官就任式のルーラ氏とジウマ大統領(Roberto Stuckert Filho/PR)
3月17日の官房長官就任式のルーラ氏とジウマ大統領(Roberto Stuckert Filho/PR)

「ブラジルのニクソン」=ニューヨーカー誌がジウマ語る

 現在、ブラジルで起こっている政治の混乱は世界的な話題にもなっているが、アメリカの「ニューヨーカー」誌は3月30日付の同誌サイトに、現在のブラジルの混乱やジウマ大統領(労働者党・PT)について語っている。
 同誌はジウマ氏を「ブラジルのニクソン」として紹介した。それはニクソン元大統領が2期目の2年目の1974年に、「ウォーターゲート事件」で自らの疑惑を調査することを妨害したことで国民の反感を買い、辞任に追い込まれたことを、まさに2期目の2年目に、ラヴァ・ジャット事件の影響で罷免に追い込まれているジウマ氏と似たものとして比較している。
 同誌はジウマ氏に関し、「かつて選挙に一度も出たことがない人物なのに大統領に選ばれた人」と紹介(事実、議員や知事、市長の経験はない)し、そういう人物が大統領になれたのは、「ルーラ前大統領の有力後継者が次々と汚職で失脚したため、残った選択肢が彼女だった」とし、「そういう存在だったこともあり、自身が罷免の危機にあるのはおかしいと強く主張している」と評した。
 同誌は、ジウマ氏本人だけでなく、現在の政治混乱につながった汚職に関して、歴史的な政治構造からの説明を試みている。それによると、その理由は大きく分けて2つあるという。
 ひとつは、他の先進国に比べ企業の競争力が弱いため、国が事業に首を突っ込んで運営を進めることが増えてしまうことだ。そこで国主導となるために、どうしても企業の競争力は弱り、特定企業や公社と結びつき、カルテルが生まれやすくなるという。
 2つ目は、議会内に20を超える政党が存在する政党過多の現象だ。このため、議会で単独や少数の政党で意見がまとまることがないため、大統領を擁する政党は、きわめて多くの政党に連立を求め、その結果、支持を引き換えにした贈収賄が生まれやすくなるという。
 PT政権が起こしたラヴァ・ジャットや、その前の大型汚職のメンサロンにもこうした背景はたしかに伺える。
 さらに同誌はラヴァ・ジャット作戦に関し、「ある特定の人物が仕掛けたというよりは、ブラジルの経済バブルが生んだ時代の気分が大きくしたものだ」との分析を行なっている。
 だが、その好景気を受け継いだジウマ氏は、ルーラ氏よりもずっと左翼主義的で、ルーラ氏が持っていた「貧しい人に基盤を持ちながらも、企業家をもうならせるバランス感覚」に欠けていたために、原油価格の高騰あたりから経済が傾き始め、結局は(隠居状態にあった)ルーラ氏に頼らざるを得ない状態だった、と同誌は分析する。3月16日には、国民の怒りを買うことになった、ルーラ氏の逮捕を避ける目的と思われる官房長官就任発表があったが、「ジウマ氏の意向では、ルーラ氏に経済立て直しを考えてということもあった」と続けている。
 同誌は締めくくりとして、「現在、ブラジルで起きている抗議活動は主にミドル・クラスの人々から起きている」と定義しているが、経済状況が傾いていけばいくほど、PTが売りにしていた社会政策の費用にも影響を及ぼせばより苦しくなり、さらに、この後に企業家寄りの政党が政権を握れば、PTがはじめた社会政策自体も継続が難しくなるであろうとしている。