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「大統領罷免祭り」に浮かれている時ではないはず

「わが家」政策第3弾発表会見で、熱烈な支持を表明する〃ルーラ教〃の信者たち(Foto: Lula Marques/Agência PT)

「わが家」政策第3弾発表会見で、熱烈な支持を表明する〃ルーラ教〃の信者たち(Foto: Lula Marques/Agência PT)

 「財政責任法の罪がないのに罷免するのはゴウペ(クーデター)だ!」とジウマ大統領は3月30日、「我が家・我が人生」政策第3弾の発表会見で、再び繰り返した。「もう、これは喜劇だ」と呆れる光景だった▼お金がないのに昨年までばら撒いてきた秘密が、ペダラーダ(公的債務を公立銀行に背負わせて隠す手法)だ。本来なら支出削減を率先すべき財政大赤字の状況なのに、逆に新しい巨額バラマキ政策を宣言するあの発表会見自体が〃財政的無責任〃そのものだ。なのに、大統領はその場で「財政責任法の罪がないのに罷免するのはゴウペ(クーデター)だ」と繰り返す。現政権はすでに客観的な自己評価ができなくなっている▼その日の伯字紙には「今年のPIBは昨年より悪化しマイナス4%」という専門家の意見が紹介され、2月の公的債務は最悪の数値―との記事で溢れていた。不景気の荒波で国家財政の歳入は圧倒的に足りなくなったが、バラマキを減らさないから財政赤字は拡大する一方。経済政策の失敗とラヴァ・ジャットという2大台風に襲われ、〃PT丸〃は沈没の危機にさらされ、大量の議員が逃げ出している▼今週会った某USP教授は、PT支持者が同法学部で集会を先日行ったことに関し、「もうルーラ教だな。理屈が通じる世界ではなくなっている」とお手上げの仕種をした。それを見てなるほどと納得した。大統領制において、最も不安定で危険な状態は少数与党の時だ。同じ穴のムジナだったPMDBが我先に逃げ出した結果、〃ルーラ教〃の原理主義者ばかりが残って、政権が〃浅間山荘〃化する恐れさえでてきた。将来に禍根を残す過激な事件が起きないことを心から祈る▼世間は「インピーチメント」という言葉に踊らされ、テレビをつけても、新聞を開いてもその話題ばかり。道端の世間話までそれでもちきりだ。しかし天邪鬼なコラム子には「これでは本末転倒…」という違和感が強い▼なぜなら、本当に最優先すべき〃目的〃は「国家財政立て直しによる景気回復」であり、大統領罷免は、そのための〃手段〃にすぎない。誰も彼もが「罷免はどうなるか」と浮かれているような状況では、目的と手段を取り違えている感じが強い▼本来、罷免後の新政策がもっと議論されるべきだ。一言で「支出削減」と言っても、今年10月に地方選挙を控えたこの時期に、バラマキ政策を大幅に削る政策を発表するのは、どの政党にとっても難しいことのはず▼増税はもちろん高級公務員の年金削減、ボウサ・ファミリアの据え置き、「我が家」政策の縮小、年金受給年齢の引き上げ―などどれも選挙民から不評を買いそうなものばかり。でも〃苦い薬〃を呑まないと抜本的な財政立て直しは難しい▼敢えて今は「罷免」を表看板に据えて、いかにも「歴史上凄い場面に立ち会わせている」と国民に思わせ、マスコミを巻き込んで大騒ぎをして目くらましをし、その後に来る〃苦い薬〃の部分には10月選挙の後まで触れないように画策している―としか思えない▼今の「罷免」審理は順当に行けば6月まで終わる可能性がある。その後は「リオ五輪」直前のお祭り騒ぎとなり、その途中から「選挙祭り」に突入する。国民はその間〃苦い薬〃を思い浮かべもしない▼「罷免」の後に来るのが、大衆迎合主義政権の第2弾であってはいけない。「罷免祭り」に浮かれている場合ではない。(深)