ここ数日のブラジルの話題はもっぱら、ジウマ大統領の罷免審議に集中しているが、それに刺激されたのか、すぐに罷免請求を起こすのがちょっとした流行のようになっている。
きっかけとなったのは、ジウマ第2期政権の教育相だったシジ・ゴメス氏が1日に、ミシェル・テメル副大統領に対する罷免請求を出したことだ。政界や国民の中には、テメル氏が自身が党首を務める民主運動党を連立与党から離脱させたのは、罷免投票でジウマ氏を不利にし、自身が大統領に就任するためで、これは一種のクーデターと解釈している向きもある。ジウマ氏のとりわけ熱心な支持者だったシジ氏による副大統領への罷免請求も、こうした動きを反映したものだ。
シジ氏の請求は下院に提出されたが、下院で大統領罷免を進めているエドゥアルド・クーニャ氏は「ばかばかしい」と一蹴した。テメル氏はクーニャ氏の党の上司でもある。
だが、連邦最高裁のアウレーリオ・メロ判事は5日、シジ氏からの罷免請求を受けるよう、クーニャ議長に命令した。これは常日頃から「罷免」という行為を好まず、「大統領も副大統領もさらには(汚職で議員権剥奪危機もある)下院議長も辞任すべきだ」と語っていたアウレーリオ判事ならではの行為だった。
クーニャ議長はこれも「ばかげている」として無視を通そうとし、テメル氏自身も請求が出されたことに憤慨した。
アウレーリオ判事の行為には最高裁の中でも疑問が呈され、ジウマール・メンデス判事は「副大統領の罷免なんてものがあるとは知らなかった」と語っている。
クーニャ議長は最高裁に不服を申し立てる一方で、各政党に特別委員会のメンバーを指名するよう通達を出した。労働者党(PT)などは乗り気だが、民主運動党(PMDB)や民主党(DEM)は、最高裁がクーニャ議長の申し立てを審理するまではメンバー指名を拒否する意向だ。
一方、社会活動団体のブラジル自由活動は6日、アウレーリオ判事に対する罷免請求を出した。これは、「議会のことを司法がコントロールするのは三権分立にもとる」ということでの訴えだった。これは、最高裁判事の任命権のある上院に提出された。
だが、レナン・カリェイロス上院議長は、その日のうちにアウレーリオ判事に対するこの請求を却下した。
そもそも、罷免請求なる行為が一般的ではないのだが、それがいったんはじまると、誰も彼もが責任追及で罷免を求めはじめる。それだけ、社会そのものが殺気立っているということか。(6日付ヴァロール紙サイト、7日付G1サイトなどより)