「今週、来週が大統領罷免の山場だ!」とは政治評論家が共通して指摘する点だ。下院罷免委員会で罷免すべきとする報告書が読まれ、それが来週月、火曜日頃に採決される。そして下院本会議(下議全員)による採決が15~17日頃に行われ、513票中の342票が集まれば、罷免審議が上院に送られる。ここまでが来週中に行われる可能性がある。もちろん342票も集まらない可能性もあり、予断を許さない▼上院で審議受入れを「過半数」で採決したら、その日から180日間、大統領は職務停止、テーメル副大統領(PMDB)が昇格する。早ければ、今月中にはその日が来るかもしれない。こうなるとPTは風前の灯だ。とはいえ、テーメルにも罷免申請が出されており、「死なばもろとも」を狙っている。上院にも罷免委員会が組織され、ジウマの罷免申請を3分の2が承認すれば、正式に「テーメル政権」の誕生だ▼では罷免の後、テーメル政権は何をするのか。「テーメル大統領」はまず組閣をやり直す。今の状勢からすれば野党勢力がそのまま連立与党にはいり、PMDB、PSDBを中心とした大臣指名を行う。PT勢は野党に戻り権力を失う。テーメルが今回大統領になる代わりに、18年の国政選挙にはPMDBは候補者を出さず、PSDBに大統領の座を禅譲すると見られている▼ラジオCBNで4日、政治評論家ケネディ・アレンカールは、こんな組閣予想をした。財務相はアルミニオ・フラガかエンリッケ・メイレーレス(共に元中銀総裁)、ジョゼ・セーラ上議が教育相か保健相、著名なドラウジオ・バレラ医師を保健相という話も、外相は外務省高級官僚ではと指摘した。「財政緊縮の一環として25省庁程度に削減(現在39)するはずだ」とも見ている。罷免後の〃苦い薬〃である福祉、医療、教育などの予算削減は10月の地方選挙の後に出てくるだろう▼このように、選挙によらずに政権がガラッと入れ替わるので、PTは「GOLPE」(政権転覆)と批判している。国民の信任を失うほどの問題を起こした大統領を辞めさせる法的手続きとして憲法に書かれている罷免制度だが、「選挙に寄らずに政権転覆」という一点だけを批判する。だがPTは与党なんだから、それが嫌ならさっさと憲法改正をすればよい。改正せずに文句ばかり言い、自らの汚職疑惑にはいっさい口を閉ざし、ただ「選択的な情報漏えいは違法だ」と批判するだけの見苦しい状態が政治力のなさを証明している▼もしテーメルも罷免され、クーニャが大統領でもこの辺の線で進みそうだ。でもクーニャも罷免されたら、レヴァンドスキ最高裁長官が「暫定大統領」となり、大統領選のやり直しをするようだ。この上位3人が共に罷免寸前という異常事態に当たり、根本的に政体を考え直す必要があるのではないか▼「議院内閣制」を真剣に考えてもいい。大統領制では大統領が強大な権限を握り過ぎており、その弊害が現在の膠着状況を生んでいる。政治的混乱が足を引っ張って、いつまでも景気高揚策が練られない。大統領は国会議員から選ばれないから、ジウマのように下議を一回もやらずに大統領が可能だ。その結果、優秀な事務方タイプだが政治的交渉能力に欠け、連立与党をまとめきれず分裂を招いた▼議院内閣制では、最大与党が連立を募って国会議員から首相を決める。首相が国民からの信任を失うような問題が起きれば、まず与党内で首相を入れ替える。ブラジルが議員内閣制なら、現在のように7割の国民が大統領を否定している状態であれば、とっくに野党から不信任案を出されて解任だ。でも大統領制には不信任案がない▼議員内閣制の良い点は、首相が下院の解散権限を持つことだ。政治危機に直面したら、総選挙で国民に一から選びなおしてもらう。今回の様な未曽有の政治危機を経験したからこそ、真剣に議論すべき段階だろう。(深)