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17日、下院でのジウマ氏罷免判断の票を投じ胴上げされるブルーノ・アラウージョ下議(Marcelo Camargo/Agência Brasil)
17日、下院でのジウマ氏罷免判断の票を投じ胴上げされるブルーノ・アラウージョ下議(Marcelo Camargo/Agência Brasil)

「チャオ、ケリーダ」とは?=大統領下院罷免審議での合言葉

 17日に行われた下院本会議での大統領罷免審議は、ブラジルらしく、まじめな政治議論の中にもユーモアや視覚的なセンスのあるものとなったが、その中である言葉が目を引いた。
 ジウマ大統領に関する罷免審議や投票の最中、賛成派・反対派はそれぞれ、スローガンとなるメッセージを書いた色付ボードを掲げ、それぞれの主張を展開した。
 ブラジル国旗の黄色と緑をあしらった罷免賛成派のボードの言葉は、以前からあった「インピーチメント・ジャー(もう罷免だ!)」と、最近はこちらの方が目立ちはじめていた「チャオ、ケリーダ」だ。
 「チャオ、ケリーダ」は、普段は男性が女性に電話をかけた時、最後の挨拶として使う、いわば「じゃあね」にあたる言葉だ。「ケリーダ」には元々、恋人の意味合いがあるが、普段は、ある程度仲のいい女性に対して日常的に使われる言葉になっている。
 この言葉には、「バイバイ、ジウマ」の意味も当然込められているが、もうひとつ重要な意味もある。
 それは3月16日、連邦警察によって盗聴されていたルーラ前大統領の電話に、そうとは知らないジウマ大統領が電話をかけた時の会話から生まれた。ジウマ大統領はその日、自分の豪邸の名義を偽った上、ゼネコンに自己負担で改修させていた疑いで地方裁判所から逮捕されそうになっていたルーラ氏に対する地方裁判所からの逮捕を、公職特権で無効にしようとして、同氏を官房長官に指名した。
 この決断は国民の驚きと怒りを買ったが、連邦警察はその日、パラナ州連邦地裁のセルジオ・モロ判事の許諾を得て、これまでルーラ氏に仕掛けていた盗聴電話の内容を公表した。その中のひとつに、任命発表から数時間後のルーラ氏とジウマ氏の会話があった。
 その中でジウマ氏が「何かあった時に使えるよう、閣僚の要綱を部下に持たせます」と語った言葉は、「やはりルーラを逃すためだったのか」と反感を買った。また、そのイメージが下院での罷免投票での致命傷にもなった。ルーラ氏はこの時、会話の閉めで「ありがとう。待ってる。チャオ、ケリーダ」といったのだだ。
 ジウマ氏はこの会話を問題視し、「大統領である自分が盗聴された」と激怒。結局、盗聴記録は最高裁がモロ判事のもとから録音を奪って、管理することとなったが、この会話は国民にとって、忘れえぬものとなった。とりわけ「チャオ・ケリーダ」は、24年ぶりに出た下院での大統領罷免賛成との歴史的判断と共に、記憶に残り続けることになりそうだ。
 ちなみに赤地のボードで書かれていた反対派のスローガンは、ジウマ大統領の口癖でもある「ノン・ヴァイ・テル・ゴウペ(クーデターは起こさせない)」だ。このキャッチフレーズも最近はすっかり定着し、この日行われた議員の口頭による投票でも、親ジウマ派の議員の大半が使っていた。
 その他にも、ブラジル国旗に身を包んだ人、サッカーのセレソンのユニフォームを着て投票壇上に立つ女性、壇上でマイクを奪うと制限時間10秒を無視して数分間演説をはじめる人、歌を歌いはじめる人まで、投票した議員も様々だった。