「ブラジル民主主義の運命の日」――17日夜、下院本会議場であった、大統領罷免請求を上院に送ることを決める投票のとき、西森ルイス弘志下議(67、二世、PR=共和党パラナ州選出)は、「私はパラナ州の地方部、農業者を代表し、ブラジルの発展と繁栄のためにSimを入れる」と宣言した。
18日に来社した西森下議は、「高山ヒデカズ議員、太田ケイコ議員もSim。今は補欠だが飯星ワルテル、ウイリアン・ウーも同じ気持ち。日系議員はブラジルを良くするために団結している」と同僚の気持ちを代弁した。
「前から大統領罷免をやりたかった。342票を越えたときは本当に感激したね」と歴史的一瞬を振り返る。「今回の367票というのは凄いんだ。こんなに票が集まったことはない。このままPTに任せていたらギリシャかベネズエラのようになる。ブラジルの将来に対する危機感を、下院議員の大半が共有していた証拠」と解説した。
「悪化した財政をペダラーダ(粉飾会計)で隠し、連邦議会を通さないで大統領暫定令で大金を動かしていた罪は重い。だからこそ、下院でこれだけの票をまとめることは難しいのに、実行された」という。「僕の所属する共和党(PR)は連立与党なのに、僕も含めて罷免賛成に26人も入れた」。
今後、上院で5月10、11日頃に罷免請求審議受け入れが過半数で決議されると、ジウマ大統領は「180日間の一時停職」となる。「早ければ5月最初には決議が出る。過半数だから難しくない。ジウマが停職となればテーメル政権が発足し、みなそこに合流するから上院の罷免審議でも、PT側につくものはさらに少なくなる。彼女が大統領に戻る可能性はほとんどない」と断言した。
「だいだいジウマは政治交渉が嫌いな人だから、僕らとはほとんど話をしたことすらない。労働者党(PT)の議員ですら滅多に会えないってぼやいているよ。そんな傲慢な政治ってないでしょ。今回の罷免は身から出たサビ。でもテーメル副大統領はまったく違う。とても会いやすい。先週の土曜日、投票の前日にも会って話してきたよ」という。
どんな話をしたかを訊くと、西森下議は「日本の話もしたよ。ジウマは2回も日本行きをドタキャンして、秋篠宮殿下が来られたときも待たせるような失礼なことをしたと苦情を言ったら、テーメルは『僕なら絶対にそんなことはしない。日本には行ったことがない。ぜひ君に日本との関係をコーディネートしてほしい』と頼まれた。そう言ってもらえると、本当に動きやすい」と伯日議員連盟会長としての動きを根回ししている様子。「新政権になれば日伯関係も好転する」と喜んだ。
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西森ルイス下議は「日本移民は自分が飲みたいピンガを我慢して、子供の教育費に回した。ボウサ・ファミリア(家族扶助)は選挙政策みたいになってしまったが、ボウサ・エドゥカソン(教育扶助)として教育を主眼に置いたものとしてやり直した方がいい」との腹案を語った。さらに話は、ラヴァ・ジャット作戦を指揮するセルジオ・モーロ判事が西森氏の地盤であるマリンガ出身であることに。「彼を知っているよ。とても温和で、円満にことを進めるタイプ」と語り、「パラナ出身の〃ブラジルのヒーロー〃として、とても誇りに思っている」と胸を張った。
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