17日の下院本会議で大統領罷免審議の継続が認められ、上院での審理への道が開かれたが、ジウマ大統領は相変わらず「あれはクーデターだ」「私は被害者」と言い続けている▼大統領は19日も、国外メディアの記者を前に「民主的な手続きで選出された大統領を理由もなく追放する行為はクーデターで、罷免は非合法」と繰り返した。参加中止の予定だった国連の会議に参加すると言い出したのも、「あれはクーデターで、私は被害者」と訴えるためだという▼誰であれ、ミスを指摘され、批判されれば辛い。まして、一国の大統領が「はい、そうですか。では辞めます」というのは簡単ではないし、ブラジル経済の落ち込みは彼女一人のせいではない。だが、為政者が時の流れを読み違え、失政を重ねた上、経済指標などを操作し、国民の目をごまかしていたとあれば、その責任は重い▼軍政下での拷問にも耐え抜いた女性闘士が「爪をたて、噛みついてでも任期を全う」と言い続ける姿には、統治能力を失った事さえ分からない為政者の悲しい現実が覗いている。一国の大統領だからこそ、引き際はきれいであれと願い、潔さを求めるのは日本人故の感性か▼罷免手続きを「弾劾裁判」の言葉に置き換えるなら、下院から上院への罷免審議継続請求は「検察からの起訴」、罷免特別委員会がこの請求の受け入れを勧め、本会議が承認したら「起訴状受理」だ。この時点で大統領は休職となり、上院が起訴状の内容を認め、実際の審理に入る段階で大統領は被告となる。審理進行は最高裁長官が担当し、上議の3分の2が賛同すれば大統領罷免で結審だ。ジウマ氏はこの重圧に最後まで耐え切れるか。(み)