ジウマ大統領は、22日に行われた国連総会で地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」に署名するため、21日夜に米国ニューヨーク(NY)入りした。潘基文事務総長が総会での演説は「3分以内で」と釘を刺したにも関わらず、9分も演説したジウマ氏は、スピーチの最後で「ブラジル民はいかなる政治的後退も許さない国民である事に疑いの余地はない」と語り、ゴウピ(クーデター)や罷免の言葉は使わずにブラジルの政治危機について触れ、罷免を巡る攻防は〃宣伝戦〃の様相を呈してきたと22日付エスタード紙、各紙電子版が報じた。
ジウマ大統領のNY行き当日、テーメル副大統領は大統領就任を見据えた政局調整の拠点としていたサンパウロ市からブラジリアの官邸に戻った。テーメル氏は、ジウマ大統領がNYに到着する前に国外主要メディア相手のインタビューを積極的に受け、〃宣伝戦〃において先手を打った。
テーメル副大統領がインタビューを受けたのはニューヨークタイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ファイナンシャルタイムズなどの各紙で、「罷免手続きは憲法にのっとって行われており、最高裁判事らも同様の意見だ。したがってジウマ大統領の言うクーデターには当たらない」との見解を語った。
しかし、80人程の社会活動家らが、サンパウロ市西部のテーメル氏の自宅前に現れ、ペンキで公道に〃(ここは)クーデター本部〃と大書した。
テーメル陣営は、ジウマ大統領とクリスティーナ亜国前大統領を比較することで、ジウマ大統領を攻撃している。クリスティーナ氏が政府支出を賄うために自国通貨を発行していたのは、ジウマがボルサ・ファミリアなどの社会保障政策を賄うために公的銀行からの貸付を受けた「粉飾会計」〃ペダラーダ〃と実質的に同じだとしたのだ。
ジウマ大統領は罷免への動きはブラジル民主主義の危機だとし、23日開催予定の南米連合(Unasul)の総会で、ブラジルに民主条項(民主主義が守られていない罰則として一時的にUnasulから外される措置)を出すように仕向けようとするのではないかとテーメル陣営は見ている。
これにはボリビアのエヴォ・モラレス大統領、エクアドルのラファエル・コレア大統領、ベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領の助力が期待されているが、23日には各国首脳は未だNY国連総会出席中で、ジウマの策略は頓挫の見込みだ。