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政治交渉が苦手で孤立する一方のジウマ大統領

あわや国連で「私はゴウペ(クーデター)の被害者」と告発するかと思われたジウマ大統領の演説。実際は穏やかな表現に(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

あわや国連で「私はゴウペ(クーデター)の被害者」と告発するかと思われたジウマ大統領の演説。実際は穏やかな表現に(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

 ジウマ大統領が先週22日、国連の本会議場で「私はゴウペ(クーデター)の被害者だ」と告発する―との憶測が飛び交い、最高裁判事までが事前に批判した。カルメン・ルシア同判事はテレビの取材に「大統領罷免は憲法に明記され、その手続きは最高裁でも確認され、その通りに連邦議会で実行されている。大統領には何度も弁護の機会が与えられてきたし、これからもある。そのような場でしっかりと自分の意見を周りに認めさせるべき。それを国連に行ってゴウペだと告発するなど論外。まずは自国内で話し合うべき」と厳しく批判した。まったくその通りだ▼「交渉嫌い」というジウマの気質・性格が災いして仲間をどんどん減らし、連立与党からの大量離脱を招き、議会工作を難しくしている。思えばジウマが再選を決めた時の14年10月27日付ノチシアス・ド・ジア紙電子版によれば、連立与党の下議は全513人中、「304人」もいた。圧倒的多数だ。それが17日の下院本会議での罷免審議の投票では賛成(反ジウマ)になんと367票、反対には「127票」のみ▼この1年半の間に304から半分以下の127に仲間が減った。その間、彼らが満足するように話し合って政策を変更するなどすべきだったが、ジウマ政権は交渉をせず、強気の姿勢を緩めずどんどん孤立していった▼この成り行きを昨年3月に予測した人物がいる。BBCブラジルが19日付で報じた、大統領府社会通信局を昨年3月に辞任したトマス・トラウマン元長官だ。彼は長官時代、機密報告書「政治的混乱についての考察」を書いて現政府批判したのがエスタード紙に漏えいし、辞任となった▼トラウマン氏は同BBC記事の中で《大統領選の時の公約とまったく違う政策を執り始めたのに、国民に全然説明しなかった》ことを批判したのがあの機密文書だと説明した。「公約と違う政策」を具体的に問われ、《とくに教育分野だ。貧困階級でも高等教育を受けられる奨学金制度Pronatec、Fies、ProUniへの資金を再選後に大幅に減額したのに、国民に説明しなかった。多くの若者が奨学金を受けられなくなり、学業を中断する羽目になった》。確かにあの当時、政権は曖昧な説明に終始していた▼さらに同氏は「ジウマはわずかな身内、ほんのわずかな人しか信じない。でも私はそれが主たる問題の原因だと思わない。真因は、第2期政権が始まってすぐに顕在化した困難な経済情勢を真っ向から見据えず、国民に説明しなかったことだ」と考えている▼「貴方が当時〃政治的混乱〃を予測しているが、それは何か?」と聞かれ、《あの時、政治的混乱に向かうと警告した。なぜかと言えば、政府は一般社会との接触を断ってしまったからだ》とし、ペダラーダ(粉飾会計)によって実際の経済状態を隠したことを批判した。《本当は大衆に「我々は間違いを犯した」と言うべきだった。なぜ国民は選挙でジウマ大統領に信認の票を入れたのか、それは間違いを告白しなかったからだ。これによって政権が国民からの支持や信頼を失った。そんな決定的な瞬間だった》と再選時を思い出す▼「その政治的な混乱が現在に至る原因だと思うか?」との問いに《そうだ。あの文書を書いた時にいずれ政治混乱に陥ると予見していた。この日曜(17日)の投票結果は起こるべくして起きた》。そんなに見通せる人物を昨年3月に辞任させたこと自体が、「臭いものにフタ」の隠蔽体質を示している。ウソばかりの選挙公約を信じ込まされ、政治交渉が苦手な人物を政界トップに選ばされた国民こそ、ゴウペの被害者だ。(深)