静岡新聞、ニッケイ新聞、リオ日伯文化協会、リオ市立マリリア・デ・ジルセウ小中学校が共催したリオ五輪プレイベント「富士山写真展」が27日、同校で始まった。すぐ近くのファベーラの子供が生徒の大半を占める関係から、数年前まで荒れ放題だった同校だが、教職員やコミュニティの努力でようやく立ち直った。リオ五輪を機に2週間の「日本文化週間」開催を決め、静岡新聞撮影の富士山写真のパネルを校内の階段や教室に張り、100人ほどの生徒が出席して開幕式が行われ、華やかな雰囲気に包まれた。
クラウジア・マリア・リボリオ・アゼベード校長(52)は開幕式で、「日本が戦後復興したのは重点教育に投資したから。そんな日本文化を勉強して、教育の大切さを再認識して」と呼びかけ、リオ総領事館の近藤健首席領事は「日本は遠いが、いつの日か本物の富士山を見に来てほしい」と語りかけた。
本紙の深沢正雪編集長も「奇しくも今日はリオ五輪まで100日。記念すべき日にプレイベントが開幕できて嬉しい。次回の五輪の開催地は東京。日本人の魂、富士山の写真を通して日本の文化や歴史に関心を持ってほしい」と語った。
当日は日伯文化協会のハイカイ研究会が富士山とポン・デ・アスーカルなどを織り込んだハイカイを披露し、生徒や教師に朗誦させ、大いに盛り上がった。お返しに、ファベーラ内のコンテストで優勝したというストリードダンスを披露した生徒もいた。
アゼベード校長は式の直前に、「数年前まで大変な学校だった。今こうやって初めて日本文化を本格的に紹介するイベントができるようにまでなって、本当に感慨無量だわ」と胸中を吐露した。同校はイパネマ海岸に位置する。すぐ裏に有名なファベーラ、カンタガーロとパボン・パボンジーニョが控えている立地から生徒の9割がそこの出身だ。
「あるクラスは70%が麻薬密売に関係がある子どもばかり。学内で密売していた子さえいた。あの頃は勉強どころではなく、生徒に暴動を起こされて備品や器具を全部壊され、しばらく閉鎖状態だった時まであった。ほんの数年前よ」としみじみ〃学校崩壊〃時代を振りかえった。
彼女が14年1月に校長に就任し市教育視学官と共に、コミュニティと学校の責任者の間で何度も話し合いをもち、教育の重要性を理解させ、徐々に立て直してきたという。「荒れていた頃は先生をやりたがる人もいなかったわ」。
写真展を企画したのは社会科教師のダビ・レアルさん。二度もサンパウロ市まで打ち合わせに来て写真パネルを運んだ。「外国のことを教えると、文化に対する敬意が生まれる。戦後、復興を成し遂げた日本の歴史や文化は素晴らしい教材」と企画を進めた動機を説明した。
式の後、アゼベード校長は「子供たちは凄くいい反応だった。興味をかきたてられている感じでホッとしたわ」と胸をなでおろしていた。
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富士山写真展の開幕式の前日には、なんとドイツ総領事館員が来校し、「リオ五輪でイパネマ海岸にドイツ館を作る。無料で公共の海岸を使わせてもらうお返しに、学校に体育館を建設して寄贈する」との申し込みを受けたという。7月には建設を開始し、五輪後に完成するとか。日本政府も立派な仮設広報施設をバーラ地区に作るというが、五輪を機にした地元に残る貢献も、ぜひしてほしいもの。