サンタクルス日伯慈善協会(石川ヘナト理事長)は4月29日夜、創立77周年を記念した『サンタクルス病院の歴史』(ポ語版)の出版記念式典を、ブラジル日本移民史料館で開催した。長い歴史を持つ同病院だが、戦時中に連邦政府に接収されて以来、コロニアから経営が離れていた経緯があり、これが初めてのまとまった歴史書となった。
熊本地震での犠牲者への黙祷に始まり、石川理事長の挨拶の後、呉屋春美文協会長が祝辞をのべ、同病院の前途を祈念して祝杯があげられた。同病院評議会の二宮正人会長や中前隆博在聖総領事も出席した。式典会場は200人以上の関係者で賑わった。
同病院は、初期移民が熱帯病でバタバタと斃れる中、当時の内山岩太郎在聖総領事をはじめ、昭和天皇の御下賜金が呼び水となり、日本政府機関等の支援を受けて設立された初の日系医療機関だった。42年にブラジル政府に接収され、90年代まで日系社会から経営が離れていた。
出版発表会の案内のために来社した同病院の太田レオ進理事は、「当院の歴史は移民史そのものだ。次世代のために日系社会の記憶が保存されることが重要だ」と出版への意義を語った。
出版に向けた端緒となったのは、創立75周年の節目に、同病院の歴史に関する文書が分散しているため、歴史書を編纂してみてはとの理事長意見があったため。理事会にて決議され、約2年の歳月を経て刊行に至った。ブラジル社会に広く流布させるため本書はポ語版で出版されたが、日本語への翻訳も予定されている。
同病院は2012年から医療サービス向上のために各プロセスの見直しを行ってきた。日本政府の支援による日本医療機器メーカーの最新機器導入、ブラジルトヨタ社からの支援を受けてトヨタ生産方式導入によるサービス向上を図ってきたという。
その結果、患者の待ち時間が削減され、病室の使用効率も85%を達成。石川理事長は、設備拡大とサービス向上による収益拡大によって「医療分野における先駆けとして、また日伯を繋ぐ架け橋としての役割を担っていきたい」と今後の展望を語った。