15年11月5日にミナス州マリアナ市で起きた、サマルコ社の鉱滓ダム決壊事故から6カ月が過ぎた。現在も行方不明の犠牲者がおり、家族や家、家財道具などを失った人々は、トラウマと闘いつつ、日常生活を取り戻す事に心を砕いているが、ドッセ川で漁を行って生計を立てていた人々も、元の生活に戻る時期さえ見通せずにいる。
5日付フォーリャ紙では、事故当日はフンドンダムから3キロの地点で午後2時13分にマグニチュード2・6の地震が起きた事から、ダムの決壊、消防への通報、救助作業開始までを時間軸にそって列記。携帯電話のシグナルがなくて高台に上ったため、流出した鉱滓に飲み込まれずに済んだ分析所職員と汚泥直撃で命を落とした同僚の逸話や、汚泥流出で車ごと流されたが、汚泥を少し飲み込んだだけで助かった職員の話などを掲載。社長だったリカルド・ヴェスコヴィ氏が事故から約30分後に連絡を受け、現場に駆けつけた事なども報じている。
サマルコ社のダム決壊は世界でも有数の環境事故で、行方不明者1人を含む19人が死亡。ダムから流出した汚泥が家屋や草木をなぎ倒しながら走り過ぎた地区や、汚泥が流れ込んだドッセ川の浄化作業は思うようにはかどらない。国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)のマリレネ・ラモス氏によれば、ドッセ川はまだ10倍も汚れており、雨の時期が来たら地表の汚泥がドッセ川に流れ込む可能性も否定できないという。
5日付G1サイトは、非政府団体のグリーンピースが、国やミナス、エスピリトサント両州がサマルコ社や親会社のVale、BHPビリントン両社と結んだ、環境回復などのために200億レの基金創設という協定を批判した事も報じた。
ベント・ロドリゲス地区壊滅、ドッセ川が死の川と化し、流域住民の生活手段も奪った代償が200億レでは安すぎると考えるのは同団体だけではない。4日付エスタード紙によれば、連邦検察庁は、資源会社3社に環境回復と住民の生活保障のために1550億レの賠償を求め、国や州の責任も追及する意向だ。
ドッセ川を経て大西洋に至った汚泥による水質や海底の砂の汚染も深刻だ。グリーンピースは海軍の調査船による水質調査の結果を分析後、ドッセ川の水に鉛や砒素、マンガンなどが含まれている事に警告を発した。
同団体はダムの安全性確保のための監査体制の不備も指摘し、ブラジルが〃鉱山事故の工場〃とならぬよう、利益追求のために人命を軽視する傾向の改善と、適切な監査体制の確立も要請している。
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