ブラジルという国の〃地軸〃が大地殻変動を起こして、一気にクリチーバからブラジリアへ移ったような週だった。ジャノー連邦検察庁長官が昨年来、仕込んできた時限爆弾が立て続けに破裂したからだ▼彼の申請により、ルーラ前大統領を起訴、ジウマ大統領を捜査対象にする案件が最高裁に今週だされた。さらに昨年末に彼が申請していたクーニャ下院議長の職責剥奪と議席停止に関しても、テオリ・ザヴァスキ最高裁判事は認可する暫定令を5日に出し、同日の最高裁本審理でも全員一致で追認した▼ある意味、「クーニャはジウマと相打ちを果たした」と言えるかもしれない。11日にジウマ大統領は上院本会議で弾劾裁判開始の多数決にかけられる予定。高い確率で41票以上が賛成すると予想され、「180日間の停職」は目前だ。クーニャの方は、そのわずか6日前に議席停止の暫定令を出された。ほぼ同時だから「相打ち」だ▼ジャノー長官がクーニャ議席剥奪の要請を出したのは昨年12月だった。この半年間、いつ暫定令が出てもおかしくなかった。もし議席停止が3月だったら、下院の大統領罷免審議では全議員の3分の2を確保できなかった可能性が大だ。同下院議長の裏技、力技ゆえに24時間突貫工事のような連邦議会のスピード審議ができ、367票も集まった▼水面下におけるPTとのせめぎあいには凄まじいものがあったに違いないが、いつも涼しい顔をしていた。そんな下院罷免審議を終了させて2週間あまり、上院での大統領停職の1週間前――というタイミングは出来すぎの感すら受ける▼メンサロン事件の端緒を開いたロベルト・ジェフェルソン氏(PTB)は《大統領罷免はクーニャの最後の使命だ。これを遂行し終えたら、奴は司法の手に落ちる。疑問の余地はない。下院の罷免投票で、最後の議員がボタンを押したら、あの世への旅路に出発するのさ。時間の問題で、最高裁判断で彼は職責剥奪される》と4月11日のクルトゥーラTV局の番組で予言していた▼12日以降のテーメル暫定政権にとっては、少々肩の荷が下りた部分もある。盟友だがアキレス腱でもあったクーニャを、バッサリと外科手術のように取り除いてもらい身軽になった。でもジャノー長官が暫定政権の大臣候補を次々にLJ捜査対象に挙げたことで、選択肢はかなり狭まった▼政治評論家ケネディ・アレンカール氏は5日付ブログで《クーニャは、多数の下議のそれと同様、PMDBに関する最大の秘密を握っている人物》と書いた。シルビオ・コスタ下議(PTdoB)も《クーニャならラヴァ・ジャット作戦で最大の司法取引供述ができるな》と冗談をいった▼ジャノー長官がルーラやジウマまでLJ捜査に巻き込む最大の根拠は、PTの身内だったデウシジオ上議の司法取引証言だった。逮捕直後にトカゲの尻尾のようにPTから切られ、裏切られたと感じた彼は、洗いざらいを同供述でさらけ出した。同じ役回りをクーニャが果たしたら、PMDBは今のPTと同じようになる▼ジェフェルソン氏が《役割を終えた奴(クーニャ)は、冥界と現世を隔てる川を渡る船に横たわり、両目の上に冥銭をおくことになる》と言った。単純に《政治家としての死》と理解していたが、本当は《PMDBの悪事を墓場まで持っていく》という意味かも―と思い直した。だが万が一、ゾンビのように墓から立ち上がって暴れ始めたら…▼メンサロン事件でジェフェルソン氏は、受け取った賄賂400万レの使途を最後まで洩らさなかった。その彼が「最も応援する悪党」とするクーニャなら、やはり墓場まで持っていく気がする。(深)