日本人写真家の千葉康由さん(44、大分県)が今年、米国の第73回国際写真賞(POY, Pictures of the Year International)のポートレート(肖像写真)部門の1位を受賞した。千葉さんはAFP通信勤務でリオデジャネイロに駐在。この写真コンテストは世界で最も古い1944年から続くもので、世界中の報道写真家から応募が集まる伝統あるコンテストだ。被写体となった障害者男性が著書を出版の折、千葉さんを取材した。
千葉さんの受賞作品は、バイーア州在住のクラウジオ・ヴィエイラ・デ・オリヴェイラさんを写した白黒写真で、「世界を反対に見る男」というタイトル。後頭部が背中に張り付いたような体形のクラウジオさんの優しく微笑む表情を、やわらかい陰影の中で撮影した温かい雰囲気の作品。
「最初にクラウジオのことを知ったのはグローボの記事だった。彼の体の形を知らせるためだけに撮られたような写真では、彼の人間性について分かりづらく、冷たい印象の写真にショックを受けた」と振り返る。
「彼の写真を撮りたいと連絡をとった。バイーアの田舎に向かう道中、どんな人か分からず不安だった。でも現地で会った彼はとてもおしゃべり好きで、よく笑う明るい人で、あっという間に惹きつけられた」という。
受賞作品に関しては「赤外線フィルターを使って撮ることで、実際の肌や空のトーンと違うものにした。同じ場所にいながら違うところにいるような、自分たちに見えない波長を感じ、放つ彼を表現したかった」と説明した。去年のスポーツ写真賞に引き続き2年連続の受賞となった。
11日午後7時からサンパウロ美術館(MASP)の地下1階の講堂で、クラウジオさんの著作『O Mundo esta ao Contrario(逆さまの世界)』の出版記念講演会が開催された。主催はベラ出版社(Bella Editora)。彼の文章と共に、千葉さんが撮影した写真が載った本だ。
舞台には受賞作品を真中に5枚のパネルが吊るされた。左右にはクラウジオさんの生活を写した写真で、家族と一緒でとびきりの笑顔が印象的な作品だ。来場者約100人は、じっくりと千葉さんの作品を鑑賞した。
千葉さんは武蔵野美術大学卒。1995年に朝日新聞写真部員となり、2007年に退社。11年にAFP通信に入社し、12年に東日本大震災の震災地の人々をとらえた作品が世界報道写真コンテストの「ニュースの中の人々」部門で1位に入賞した。