第1回本荘追分ブラジル大会に出席するために来伯した由梨本荘市の長谷部誠市長、鈴木和夫市議会議長、同保存会の佐林公善会長、全日本大会の王者・三浦九十九さんら10人の歓迎会および第32回由梨本荘親睦会が、サンパウロ市の秋田会館で21日昼から盛大に行われ、約120人も集まり会館が一杯になった。
のっけから同保存会のメンバーによる迫力の唄、太鼓、三味線、尺八が披露され、会場から唱和する大きな歌声が上がり、さながら民謡ライブのような盛り上がり。
三浦さんは「初めて来たが、噂どおり本当に遠かった」と笑いを誘いながら「秋田草刈唄」を唄いはじめ、「田舎なれども 俺が里は 西も東も アリャ金の山」と見事な声の張り、高音の伸びを響かせた。
今大会のお膳立てをしてきた同市出身の伊藤武さんが司会を務め、「秋田男は口数が少ないといわれるが、この民謡があれば十分。名刺代わりに唄っていただきました」と開会を宣言した。
伊藤さんの秋田男らしい粘り腰の呼びかけがあったからこそ、ブラジル日本民謡協会やブラジル郷土民謡協会、江差追分会ブラジル支部、グループ民などなど、かつてない民謡界総出の参加協力が実現したという。
主催したブラジル本荘追分会の川合昭会長(秋田県人会会長)も「今、本当に久々に本荘追分を聞き、滅多にないことですが、涙が込み上げてきました」と歓迎の挨拶。
長谷部市長も「サンパウロに唄声を響かせて」、鈴木議長も「距離は遠いが、心の距離は非常に近い。リオ五輪には秋田から現時点で3人の選手が出る。ここに来られない県民に代わって応援をお願いしたい」と語った。中前隆博在聖総領事も駆けつけ、本荘追分保存会の佐林公善会長の音頭で乾杯した。
同保存会の佐々木勲副会長は「追分は普通、尺八だけ。三味線は全国でもない。間の取り方が難しいのに、よく頑張っている」と当地の民謡愛好家が次々に唄うのを聞きながら感心していた。
サンパウロ市近郊のサンベルナルド・ド・カンポ市の松寿会で北原民江先生から習っている辺原ルジアさん(68、二世)は「一人だと唄いづらいから最初は民謡コーラスを作ったの。そしたら20人も集まった。そして先生にきてもらって、文協芸能祭にもでて、今回も参加したの」と喜ぶ。今年10月の選挙では市議に立候補するとも。
隣にいた同民謡コーラスの藤本紀子さん(63、二世)も「本荘追分を唄っていると気持ちよくて、心が静かになる。普段はカラオケ、『暗夜航路』です」と笑った。
当地初の日本人医師、高岡専太郎(秋田県出身)を先祖に持つ高岡グループからホンダ・サブロウ役員が参加し、使節団と大会役員に記念品を手渡した。午後3時からワークショップとり、丁寧に指導していた。
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本荘追分前夜祭の時、ミナス州ベロオリゾンテから出席した郷土民謡支部長の棈木(あべき)幸一さん(80、鹿児島県)は「使節団の皆さんは秋田県人向けの挨拶をされていたが、大会出場者の大半は他県人だと思う。私も普段は刈干切り唄(宮崎民謡)一本。本荘追分は出だしから難しい」と語った。15歳の頃にコチア青年で渡伯する計画があったが断念したという加藤五郎さんが、ステージの「秋田大黒舞(だいこくまい)」に合わせて大黒様の格好で客席に登場し、めでたさを倍増させていた。「すべて自前の衣装」だそうで、さすが元座敷唄らしい遊び心が感じられる趣向だ。