【世界一になった親友】
97年当時、パルメイラスには、フェリペ監督を筆頭にGKマルコス、DFホッキ・ジュニオール、ジュニオール、カフーなど、後にセレソンとなって2002年のW杯を制したメンバーが数人いました。
同じポジションのマルコスとは親友になり、とても親切にしてもらいました。
私がチームに合流した時、マルコスは膝の怪我から復帰したばかりで、モチベーションも低くて太っていました。いつもコーチの愚痴ばかり言っていたのですが、まさかその男が、世界一のGKになるとは想像すらしませんでした。
練習が終わると毎回居残って、彼とPKで勝負するのがお約束になっていました。マルコスが勝つと「マルコスが止めた! ブラジルが優勝!」と雄叫びを上げて、ゴール前を走り回っていました。そんな彼を呆れて眺めていたのですが、5年後に、マルコスの言葉が現実となったわけです。
いつも下らない冗談で大笑いし、毎日車で駅に送ってくれていた友達が、世界の頂点に立ったことは、私にとって大きな誇りとなっています。
日本では少し有名になると偉そうにする選手もいるのですが、ブラジル人では代表クラスの選手でも、そういう勘違いする選手は滅多にいませんでした。
【恩返し】
滞在したのは1年足らずですが、大変多くの方にお世話になりました。なかでも日系人の皆さんには、言い表せない程、親切にして頂きました。
リベルダーデの街を歩き、二世の方々とお話をしていると、幾多の苦難を乗り越えてこられたタフさと同時に、故郷であり、自分のルーツである日本に対する哀愁を強く感じました。サウダージという言葉は、彼らのためにあるのではないかと思うほどです。
大勢の人を通じて「Amigo」という言葉の深さと重みを知ることができたのは、貴重な財産になっています。
日本人の中には、「ブラジル人は約束を守らないし、時間にルーズだから仕事にならない」という人もいますが、本当に大事な約束に関しては、よっぽどブラジル人の方が律儀に守るし、仁義にも熱いと思います。
いつかお世話になった人たちに、少しでも恩返しをしたいと切望してきましたが、この度、ニッケイ新聞の輿石信男東京支社長から連載のお話をいただき、長年の願いを叶えるチャンスを得ることが出来ました。本当に嬉しく思っています。皆様の健康増進に直結する情報を発信し続けて参ります。
【美しき日本人の身体技法】
誰もが、健康で痛みの少ない人生を送りたいと思っていますが、それを実現するには、幾つか気をつけるべき事があります。特に日々の姿勢とお尻の使い方が重要です。
なんでも便利になった現代社会では、運動不足によって生じる病気や機能障害が深刻化しています。そんな中で、国民の健康に対する関心が高まり、日本でも定期的に運動する人が増えていますが、闇雲に始めて怪我をしたり、体を痛めたりして、途中で挫折して運動を止めてしまう人も少なくありません。
近年、欧米から様々な健康メソッドが日本に輸入されているのですが、わざわざ海外から取り込まなくても、私はよいと思っています。
元来、日本人の身体感覚値は高く、伝統的な姿勢と立ち居振る舞いは、他民族には真似できない独特の美しさがあります。その美しさは、西洋の肉感的な美しさではなく、機能性と精神性から生じた美しさです。
しかしながら、日本人特有の身体技法(姿勢や所作)の美しさが失われつつあります。それに伴うように、首・肩こりや腰痛など、不調に悩む人が増え続けているのです。
本連載では、先人たちの姿勢=佇まいや所作を見直しつつ、赤ちゃんのお尻の使い方などをミックスした、オリジナルのメソッドをお届けしていきます。
三日坊主で長続きしなかった人たちも、「気持ち良いから」、「効果が直ぐに分かるから」、「痛みが改善されるから」という理由で、日々のルーティンワークに取り入れているものばかりですので、是非ともお試しください。
【プロフィール】
伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身
メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。