経済危機に瀕するベネズエラの状況を鑑み、ドイツの航空大手ルフトハンザ社が「6月17日からフランクフルト~カラカス(ベ国の首都)便の停止」と5月28日に発表した翌日、ラ米諸国で最大の航空会社Latamも、サンチアゴ(チリ)からグアヤキル(エクアドル)、リマ(ペルー)、サンパウロ市(ブラジル)を経てカラカスへ行く便の無期限停止を発表したと5月31日付伯字各紙が報じた。
Latamの決断は、Gol航空やエア・カナダ、アリタリア、ルフトハンザに次ぐものだ。Golは今年2月に同国への便を停止した。
Latamの運行停止はサンパウロ市―カラカス便から始まり、7月中には他の都市との便(2路線)も停止される。既にカラカス便を予約している乗客には無料で、便の変更や払い戻しが行われる。Latam社は「当社はベネズエラを重要な市場とみなしており、早めの運行再開を目指す」との声明を発表した。
Latamなどのベ国便運行停止は、マドゥーロ大統領が航空各社に対し、同国で生じた利益をドル換算して本国に送金する事を困難にした上、年間780%にも及ぶインフレが航空各社の利潤を減らし、活動を困難にしている事などが原因だ。同国では、航空券の販売を同国通貨のボリバルで行う事が義務付けられ、現地職員らの給与その他の経費を払った後の利潤を米ドルに替える際の為替レートを一方的に決められている。
12年には航空会社は同国での利潤を1ドル=4・3ボリバルで本国送金できていたが、15年のドルは12ボリバルに設定され、航空会社の同国での経営は悪化した。
Latamは同国内で差し抑えられた形になっているドル資産額を明らかにしていないが、ルフトハンザは総額1億ドルと見積もっている。
3月には国際航空輸送協会が、同国の経済危機により、わずかな航空会社しか同国便を維持できなくなるだろうと警告していた。
政治に目を向けると、野党の民主統一会議(MUD)は、国家選挙委員会(CNE)にマドゥーロ大統領退陣を問う国民投票の実施を求めた署名180万筆を提出している。国民投票実施に必要なのは20万筆だ。
大統領側はそれに対抗して5月31日、野党が少なくとも1万筆の署名を偽造したと非難した。
CNEが全署名の有効性を確認するための期日は2日だ。野党側は大統領側が国民投票を遅らせるために署名確認を遅らせていると非難している。新たに総選挙を行うためには、大統領退任を問う国民投票は今年中に承認されねばならない。