リオ五輪開幕まで2カ月を切り、治安維持を最優先事項としている当局だが、悪名高いスラム街アレモン複合ファヴェーラ(CA)では、長年の治安改善活動にも関わらず、改善の兆しが見えないと6日付フォーリャ(F)紙が報じた。
CAの治安改善のためには過去10年間で7億レアルが投じられてきており、2010年の軍による占拠開始後は、政治家や非政府団体、映画スターらがアレモンの丘に上って写真に収まり、テレビドラマの舞台などにもなった。
しかし、五輪を目前に控え、大会期間中の交通輸送の動脈、幹線道路リーニャ・アマレラ沿いに広がるCAは、軍警の治安維持部隊(UPP)が駐屯しながらも、安定とは程遠い状況にある。
同地区にはコマンド・ヴェルメーリョ(CV)と呼ばれるギャング団が舞い戻っており、住民の日常は銃声に脅かされている。非政府組織「地域の声」によると、今年は既に8人が死亡し、20人が負傷している。死者の内7人、負傷者の内13人が民間人だ。
2010年に実施された掃討作戦でCAから追放されたCVの麻薬密売人は、当局の財政難につけこみ、活動を再開している。
CVは、警察の駐在所もあるロープウエーの停留場付近とは離れたところを根城にしている。
F紙はアレモン内のアレアル地区とカジーニャス地区でギャングたちが警察車両の進入を防ぐために、鉄柵やセメント入りのドラム缶を設置しているのを確認した。住民は報復を恐れて、地区内部の実情を語ろうとしないが、ネット上には毎日のように、軍警とギャングたちの銃撃戦の写真や映像が投稿されている。
UPP司令官のアンドレ・シウヴァ大佐は「CAの治安回復作戦は困難で時間がかかる。一夜にしてできるものではない」と語り、「この地域は数十年も衛生、教育、基本インフラが全てかけていた。6年程度の比較的短い期間での平定はとても無理」と続ける。
当地で抗争に巻き込まれ命を落とす人は一向に減らないが、シウヴァ大佐は「UPPは、衝突回避のために綿密に計画を立てて動いている。経済危機の影響も捨てきれない。失業率が高ければ悪事に手を染める人間が増えるのは自明」とした。