ブラジルの現代芸術を代表する芸術家、トゥンガが6日、入院先のリオデジャネイロ市サマリタノ病院で咽頭がんのために亡くなった。64歳だった。
本名はアントニオ・ジョゼ・デ・バロス・カルヴァーリョ・エ・メロ・モウロンで、1952年にペルナンブッコ州パルマレス市で生まれ、1973年から本格的に芸術家としての活動をはじめた。
トゥンガが本格的に注目されたのは、「アン」と名付けられたモノクロの自主実験映画だった。これはリオにある「ドイス・イルモンス(2人の兄弟)」と名付けられたトンネルについての映画で、フランク・シナトラの名曲「ナイト&デイ」が流れる中、部屋の中に設置した円形の軌道上を回るカメラでトンネル内の映像などを投影し、同じ場面を繰り返し見せることによって、時間が継続し、視聴者が常に同じ場所にいるかの如き錯覚を抱かせるという趣向の実験映画だ。この作品は近年、ニューヨーク近代美術館(MOMA)が購入した。
トゥンガはその後、インスタレーションと彫刻で国際的に評価されていく。彼の作品のモチーフには円形や球形が頻繁に使われている。錬金術にも造詣が深く、鉄や銅、水銀、鋼鉄、鉛、ガラスに磁石といったものも使い、目に見えない世界も描き出そうとした。
著名な作品には、双子の少女が伸ばした髪でお互いをつないだ「シフォパガス・カピラーレス」や、赤を印象的に散りばめたインスタレーションの「トゥルー・ルージュ」、ガラスを駆使した幻想的な「クッキング・クリスタルス」などがある。
彼の作品は、MOMAやスペインのソフィア王妃芸術センターなども所有するところとなっている。より詳細な経歴や作品の写真は公式サイト(http://www.tungaoficial.com.br/pt/)でも見ることができる。(7日付エスタード紙より)