元代表監督、柔道家・篠原正夫さんの凄さは、どんなに厳しい指導を受けても「当たり前のこと」と忍耐強く受け入れたところにありそうだ。とりわけ厳しい指導を受けたはずだが、本人からは体験談をほとんど聞き出せなかった。
後に、第三者から普通に往復ビンタなどの〃指導〃が行われていたおの逸話を聞いた。今では不可能だろうが、当時は選手も指導者も当然のことと思っていたのだろう。
息子準一さんへの指導についても同様。「大会で息子が負けた翌日は、早朝に準一を叩き起こして憤慨しながら稽古した」。そのエピソードも妻や娘から聞いたもの。当の本人はあっけらかんとしていた。
そんな息子も今となっては立派な代表監督。リオ、東京、さらにはその先の五輪へ。しごきで武士道精神を伝えることは難しい時代になったとはいえ、彼から次世代へ継承させてほしい。(祐)