トランスペトロ社のセルジオ・マシャド元総裁の司法取引証言(報奨付供述)により、毎週一人ずつの勢いで3大臣が辞任に追い込まれた。17日G1サイト電子版によれば、彼は「一般人に戻るために、人生のこの部分を消し去る。心に平安を取り戻したい」と司法取引を受け入れたという▼これを読んで、司法取引証言というのは、どこかカトリックの「告解」に似ていると感じた。盗み、殺傷沙汰などを犯しても、神父の前で自分の罪を告白し、神に許しを乞えば許されるという儀式だ。司法取引では裁判官が〃神〃の役割をして、罪人の罰を軽減してくれる▼マッシャド元総裁は本来、禁固20年の可能性があったが、司法取引によりわずか3年間の自宅軟禁に軽減された。大きな違いだ。ブラジル刑務所の酷さを熟知する政治家は一日でも居たくないから、次々に司法取引証言者が現れる。エスタード紙15日付は「クーニャが司法取引証言か」と報じた。「もし私が捕まれば、みんなを道連れにする」と内輪で爆弾発言をしていたクーニャ下院議長だけに、PMDBのみならず200人からの親派下院議員が震え上がることになる▼マッシャド証言の賄賂送り先にはアエシオPSDB党首やマリーナREDE党首ら18年大統領選挙の最有力候補まで含まれ、テーメル大統領代行にも賄賂斡旋容疑が浮上、「一体誰が無傷で生き残るのか?」が首都の巷間で話題になっている。そこで次期大統領候補に急浮上してきたのがエンリッケ・メイレーレス財相(70)だ。彼は11年1月に中銀総裁を辞めて以降、政界を離れていたので、現時点ではペトロブラス汚職捜査で容疑が出ていない▼おもえばコーロル大統領が弾劾裁判で辞任した後、イタマル暫定政権の財相FHCがレアル計画でインフレ退治を成功させ、その功績をひっさげて大統領に当選した。今回もジウマ罷免の流れで、テーメル暫定政権の財相としてメイレーレスは抜擢された。この大不況を好転させられれば、大統領選に出る資格は生まれる▼彼はリオ連邦大学を卒業後、ボストン銀行ブラジル社で経歴を積んだ生え抜き銀行マンだ。現地社長を経て1996年からは世界社長まで務めて定年退職した。当時はビル・クリントン米大統領(93―2001年)の民間顧問団の有力メンバー、世界金融界のトップクラスに直結した一人だった▼退職した後、華々しい経歴をひっさげて02年に生まれ故郷ゴイアス州から連邦下議に立候補して一発で当選した。つまり、銀行屋としての経歴を極めた後は、政治家に転身する野望を抱いた▼実は彼の血筋を見ると政治家の家系だ。祖父はアナーポリス市長3期、父はゴイアス州局長2期、伯父は同州知事。本人も学生時代にバス料金値上げ反対闘争のリーダーをしていた。その血筋から言えば、政治家の頂点、大統領を目指しても何の不思議もない▼しかも彼はPSDBとPTの両方と良好な関係を保っている稀有な人物でもある。02年当時、彼はPSDBから出馬したにも関わらず、ライバルPTのルーラ大統領(当時)から中銀総裁の指名を受けて03年から8年間も務めあげた。辞めた直後、2012年から年商650億レアルといわれる世界最大の食肉加工企業JBSの経営審議会会長を引き受けた▼現在TV宣伝が毎日流れる新興のオリジナル銀行や食品企業Vigorの社主、Azul航空の経営審議会役員を務めるバリバリ現役の企業家だ。ペトロブラス汚職捜査が進むほど無傷の大統領候補が減る中で、「漁夫の利」的に存在感が強まる可能性は強そうだ。(深)