【重心とサイドステッチ】
日本は梅雨入りして、日増しに蒸し暑くなっています。今年は、例年以上に暑くなると予想されているのですが、すでに湿気で体力が消耗しています。
皆さんは、いかがお過ごしでしょうか?
前回お話したスプリットスタンス(足を前後に開いて立つ)を実践されている方は、新しい立ち方が脳と体に定着するまでに3週間かかるので、それまで辛抱して頑張ってください。
スプリットスタンスは、パラレルスタンス(足を左右に開いて立つ)よりも無理なく理想的な姿勢を維持できるため、腰や首へのストレスが軽減します。スプリットスタンスのときは、後ろ足のカカトに荷重するように意識して下さい。
さて今回は、自分の姿勢を目で見ながら整える方法をご紹介します。
【見た目年齢と姿勢】
「人は見た目が9割」と言われていますが、ルックス(見かけ)よりも姿勢の方が相手に与える印象が強いことをご存知ですか?
姿勢によって、自分のイメージがプラスにもマイナスに作用します。現代人は、座りっぱなしの人が多いため、背中の丸まった方が大多数を占めています。
だからこそ、ちょっと背筋が伸びているだけで目立ち、それだけで好印象を持たれるのです。
【9割の人が前のめりになっている】
自分の姿勢が悪いことを気にしている方は大勢います。ですが、どのように姿勢が悪いのか、具体的に把握できている人は滅多にいません。そのためか、9割以上の人は、全身が前のめりになった前傾姿勢になっています。
上半身を起こす筋力が低下したことと、嗅覚や聴覚よりも、視覚からの情報に依存するようになったことが、大きな原因でしょう。視覚に頼ると、ヒトは自然と前のめりになるのですが、これだと、実際よりも身長が小さく見られるだけでなく、老けてみられます。
セミナーで、参加者の方々に「お年寄りの特徴」を体で表現してもらうと、ほぼ全員の方が、前のめりで背中を丸めた格好をされます。やはり、前のめり姿勢は、「老い」と「不調」のシンボルとなっているのでしょう。
面白いことに、背中を丸めて前のめりになると、まぶたが下がって表情が暗くてかたくなるのです。
反対に、「若さ」と「健康」を体現すると、背筋がしゃんと伸びて少し胸を張った格好になります。頭を上半身の真上に位置させると、まぶたが上がって柔和な表情になります。
ちょっとした違いでイメージアップできるのならば、背筋を伸ばした姿勢で過ごしたいですよね。
【前のめりが腰痛と膝の痛みの原因】
前のめり姿勢は、足の指の変形、首・背中・腰・膝の痛みや関節の変形を起こす誘引になります。
つま先に荷重して脛の骨が前に傾くと、ふくらはぎと脛の筋肉が伸び縮みできなくなるため、足の関節の可動域が大幅に小さくなります。
足首が硬いと、しゃがんだり屈んだりしたときに、ひざ関節にかかる負担が増大して、やがて変形性膝関節症などを患うリスクが高まります。子供のころは、すっと深くしゃがめたのに、大人になるとしゃがめなくなるのは、足の関節が硬くなったからです。
もし、前のめりになっている人が地球上からいなくなったら、膝の痛みや腰痛に悩む人はいなくなるかも知れません。それほど、この不良姿勢は体にとって良くないのです。
【サイドステッチで姿勢が整う】
厄介な前のめり姿勢ですが、自分の姿を鏡に写して矯正する方法があります。①鏡の前に横向きに立ちます。②ズボンのサイドステッチ(横にある縫い目)が床に対して垂直になるように立ちます。
これだけで、骨盤―胸郭(きょうかく)―頭部の位置が整って、理想的な姿勢になるのです。とてもシンプルな方法ですが、鏡さえあれば、その場で前のめり姿勢を矯正できるので、是非とも習慣にして頂きたいと思います。
【プロフィール】
伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身
メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。