ブラジル熊本県文化交流協会(田呂丸哲次会長)は4月に熊本大震災の義援金専用口座を開き、そこには現在までに約37万レアル(1120万円)の寄付金が寄せられた。今月の8日、全義援金のうち15万レアルを母県へ送金した。先没者を偲ぶ『第14回追悼供養』を19日午前11時から開催した折り、同会役員らは揃って寄付者への感謝を口にした。
今回は熊本県を中心に4月に発生した地震被害を受け、震災で亡くなった人々の慰霊法要を同時に行い、同会員を中心に約90人が参加した。最初に熊本地震の犠牲者や、同会の先没者へ一分間の黙祷が捧げられた。
田呂丸会長は挨拶で「先祖に対する感謝を決して忘れてはいけない」と強調。熊本地震に言及し「今も多くの人々が避難所に暮らしている。犠牲者のご冥福と、母県の一日も早い復興を祈りましょう」と訴える。
東本願寺の川上寛祐師による読経とともに、参加者は神妙な顔で焼香を行なった。川上師は法話で「阪神淡路、東日本、そして熊本と、人間の力が及ばないような大震災が続いている。私たちはいつ無くなるか分からない命を生きている」と説き、「先祖をはじめ、ご恩を頂いて生きている。そこに感謝することが大事」と述べる。
参加者の三浦重幸さん(77、二世)は、「僕らもブラジルから応援している。ますます皆で助け合い、仲良くがんばってもらいたい」と真剣な表情で語った。
義援金について赤木数成書記に尋ねると、「マット・グロッソやミナスといった遠方からの寄付もあれば、ふらりと事務所に来た男性が50レ札の厚い束をいくつも取り出し、計2万レもの寄付をしたこともある」と語った。非日系人から2レや5レといった小額の振込みもあり、「生活費に困っているような人が、やり繰りして送金してくれたのでは」と目頭を押さえた。寄付は約500の個人、約30の団体から届いた。
集まった寄付の送金方法だが、日本へ直接送ると25%前後も課税される場合があるため、定款を銀行側に提出し、特別な「義援金扱い」で送った。これにより18米ドルの手数料と0・38%の低課税のみで送金手続きが可能。
同義援金の送金は今回が初。慎重を期して、義援金約37万レのうち約15万レを送金。熊本県側で14日、無事に届いたことが確認された。同会には現在も義援金が届き続けているため、今後3回に分け、残りの義援金を母県へ送る予定。
田呂丸会長は「一世が少なくなって日系社会のつながりは弱まったと思っていたが、今まで全く接点が無かった日系団体からの寄付も多く、大変驚いている」と感謝の気持ちを述べた。
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読経をつとめた川上寛祐師は、去年4月に帰国した東本願寺の元輪番・菊池顕正師の安否に言及。熊本県出身の菊池師は南阿蘇に暮らしており、地震後に電話したところ、「棚の上にあるものが落ちた程度」だったとか。熊本県人会の赤木書記の親戚は、現在も全員が車中泊を強いられている。また熊本県庁の職員の中にも「日中は震災復興のために走り回り、夜は壊れかけた家に入れず車に寝ている」人がいるという。数字には現れない被災者の辛さを軽減するため、今後もブラジルからの支援を続けていきたいところ。