29日から7月3日まで、リオ州パラチーで、第14回目のパラチー国際文学祭(FLIP)が行われる。同祭は毎年、テーマとなる作家を選ぶが、今回は1970~80年代のアンダーグラウンド詩人、アナ・クリスチーナ・セーザルが選ばれた。
FLIPで女性の文学者が選ばれたのは、2005年に小説家のリスベス・スペクトルが選ばれて以来、2人目だ。
通称「アナC」として知られる彼女は、1952年にリオ州ニテロイの中流家庭で生まれた。父親は出版社を立ち上げたジャーナリストだ。
幼い頃から詩の才能があったアナCは、6歳頃から詩を書きはじめた。1969年にロンドンに交換留学し、エミリー・ディッキンソン、シルヴィア・プラス、キャサリン・マンスフィールドといった英文学に傾倒するようになった。
アナCは、リオのカトリック総合大学の文学部を卒業後、詩人としての本格的な活動に入った。ときは70年代の前半で、軍政が反政治的と見なすものへの検閲や弾圧が激しかったが、アナCは、60年代の文化運動「トロピカリズモ」の影響下にある文学運動「ジェラソン・ミメオグラフォ」のひとりとなった。1975年には、学生時代の恩師でもあるエロイーザ・ブアルキ・ダ・オランダの編集のもと、「26ポエタス・デ・オージ」に、26人の詩人のうちの1人として参加した。
その後も表現の自由を求めたアナCは、大手の出版社でない、ほとんど自主出版に近い形での発表形式を好んだ。彼女は「セナス・デ・アブリウ」(1979年)、「ルーヴァス・デ・ペリカ」(1980年)といった作品で注目を集めるようになる。
その一方ではリオ連邦大学で英文学の研究を継続し、ディッキンソンやプラスといった女性作家の作品の翻訳や批評なども発表し続けた。
82年には後に彼女の最大の代表作と言われるようになった「ア・テウス・ペス」を発表したが、1983年10月29日、アナCは両親の住む家の窓から飛び降り自殺し、31歳の短い生涯を閉じた。
だが、その繊細な作風やアンダーグラウンドにこだわった創作、現代にも通ずるファッション・センスなどの影響もあり、アナCの作品は今日の若者にも読まれている。主催者側も、今回のテーマにアナCを取り上げることで、FLIPやブラジル人作家が書いた詩への興味が高まることを期待している。(FLIP公式サイトなどより)