JICAシニアボランティアとして熟年クラブ連合会に派遣されている、与那覇博一さん(51、沖縄)が2年間の任期満了を目前に控えている。今月8日から開かれる、県連日本祭りでの「お手玉レクリエーション」を最後に帰国することになった。
お手玉は脳の活性化につながり、楽しく体を動かすことのできるレクリエーション。高齢者の健康促進にも最適とあって、与那覇さんは積極的に取り入れている。
派遣当初は、当地にお手玉自体が全くないという状態だったという。各所を回ってはワークショップを行ない、日系社会の中でのお手玉文化の普及に取り組んできた。日本祭りは言わば2年間の集大成だ。
これまでの活動の中で「当地でも高齢化が進むが、介護環境が全く整っていないと感じた。特に健康な状態から動けなくなり死に至るまでの間、日本ではデイケアサービスがあるが、ブラジルではその間の支援が欠けている」と問題視する。
「最後まで充実していた。だがやり残した感は否めない」。まだまだ名残しさを見せる。「以前老人国際学会に呼ばれ、USP(サンパウロ大学)で講演したが、それをきっかけに日系社会を含めてかなりの人脈ができた。日本の介護技術をブラジル社会に普及させていける手応えを感じた」と振り返る。
「まだまだできることがあるはず。培った経験と人脈を活かして、民間主導でモデルケースを作り、政府が体制構築に関与するように巻き込んでいきたい」とも語り、再びブラジルへ戻ってきたいとの意気込みだ。
来伯前は沖縄県石垣島で、福祉関係に従事していた与那覇さん。今派遣の際には7人家族で来伯した。「現役引退の後に参加するシニアが多いなか、仕事を辞めて7人家族を連れて参加するということは、JICA史上初だった」と照れくさそうにはにかむ。
「参加にあたっては猛反対に合ったが、ボランティアをしながら、同時に5人の子供たちを育てることができたのは、ブラジルだったからこそ。支えてくれた日系社会の皆さんには、一言では表せないほど感謝の気持ちでいっぱいです」と感慨深げに語った。
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「ポ語が分からないがために、孫やひ孫とのコミュニケーションがとれない」といった、日本にはない移民社会独自の高齢者問題の深刻さをヒシヒシと感じたというJICAシニアボランティアの与那覇博一さん。「飾りとしても美しく、お孫さんとも接するきっかけとなるはずだ」と考え、お手玉文化の普及を目標に取り組んできた。「お手玉体操」や「お手玉ゲーム」を考案し、ブラジル社会にも広く普及できるとの手応えを得たという。数年後には、高齢化社会に突入すると言われるブラジル。高齢化社会の先進国である日本が介護技術において、貢献できる余地は大きいかも。