7月10日に行われた参議院選挙で、非改選の改憲派無所属議員も加えた改憲勢力が3分の2を超えた事に、大きな不安を感じた▼決して政治通ではないから、事実関係を充分認識している人と比べれば事の重大さは半分もわかっていない。改憲勢力が衆参両院で3分の2を超えても、実際の憲法改正には国民投票という壁があり、国会承認=改憲ではない事に僅かな安堵も覚えている▼だが、今回の参院選で争点から隠されていた憲法改正は、昨年の安保法案同様、戦争放棄や言論の自由などの憲法の基本概念を覆す危険性を孕んでおり、今回の参院選の結果を安倍独裁政権の強化と見る声がある事などを考えると心が騒ぐ▼「アベノミクス」が認められた証拠との発言の裏では憲法9条を含む改憲への準備が着々と進んでいるとか、安倍首相や現閣僚の多くが所属する「日本会議」は「美しい日本を再建し誇りある国づくりを目指す国民運動」を謳っているが、実際は「戦前に戻ろうとしている」という声さえあるからだ▼第2次大戦前の国際連盟総会で、時の日本国大使は日本は負けると知りつつも時の流れに逆らえず「日本が正しかった事は時が証明する」と語ったという。大戦では多くの国民が命を失い、国は疲弊した。一丸となると予想以上の力を発揮する国だから復興は早かったが、充分な議論を尽くさず時の流れで憲法を変えれば、戦争で命を失い、大きな傷を負った人達の犠牲を踏みにじる事になるだろう▼終戦当時、引き上げ時のごたごたの中で、満州にいた両親が生後間もない次兄を失った事を知るだけに、「同じ過ちを犯さないで」との叫びが湧き上がってくるのを禁じえない。(み)