停職中のジウマ大統領は18日、大サンパウロ市圏サンベルナルド・ド・カンポのABC連邦大学で講演を行い、ミシェル・テメル大統領代行の政治を批判すると同時に、自身の境遇をトルコの軍事クーデターとも比較した。19日付伯字紙が報じている。
ジウマ大統領はこの日、ABC連邦大学に集まった学生や教員ら約500人を前に講演を行った。サンベルナルド・ド・カンポ市は、ルーラ元大統領や労働者党(PT)の地盤としても知られている。
ジウマ大統領はそこで、テメル大統領代行に対する批判の数々を展開した。まず、テメル氏が行おうとしている政治を「議会主義を強め、議会による間接統治になりつつある」として、現行のあり方は大統領の権限を損なわせると批判した。
また、15日にトルコで起き、結果的に失敗に終わった軍事クーデターと現在のブラジルの現状を比べ、「武器や戦車を使っているわけでもないからブラジルではクーデターは起きていない、と言う人もいる。しかし、ブラジルでは議会によるクーデターが起こっている」とし、下院で罷免を支持され、上院でも罷免審議継続を決められて停職に追い込まれた自らの現状になぞらえて批判した。
さらにジウマ氏は、テメル氏が提唱した、向こう20年間の政府支出の上限設定の対象に教育や保健の部門が入っていることに関しても、「依然として根強い格差社会のブラジルでは、教育は常にお金をかけないといけない」と強く主張した。
大統領停職に繋がった連邦政府のペダラーダ(粉飾会計)疑惑の詳細調査を行っていた連邦検察庁のイヴァン・クラウジオ・マルクス氏が、粉飾会計は犯罪行為にはあたらないとして、8日に同件をお蔵入りさせたことについて、ジウマ氏は「今頃になって問題がないとは」と嘆いた。
このような主張を展開したジウマ氏だったが、伯字紙の反応は決して大きくはない。今月行われた世論調査では、今後の経済状況見通しが好転したことなどから、テメル暫定政権継続を望む国民が半数に上ることも報じられている。また、ジウマ氏の罷免請求を出した法学者らは、12日に開かれた上院の罷免特別委員会でも、議会の承認を得ずに大統領令を出したことなどは責任法違反に当たると主張した。
上院での大統領罷免審議は、8月1日の特別委員会に意見書提出、4日に意見書承認の予定だ。ここで罷免審議継続となれば、5日の本会議で意見書を朗読し、9日の本会議で弾劾裁判開始の是非を問うことになる。弾劾裁判開始の場合はリオ五輪中も審理を継続し、8月下旬、どんなに遅くともリカルド・レヴァンドウスキー最高裁長官の任期の切れる9月9日までには結審となる見通しだ。
現時点で上院でのジウマ大統領の罷免判断は賛成38、反対が18で、意思表明をしていない25人の上議のうち16人以上が賛成すれば罷免が成立する。PT寄りの党の意思表示は既にカウントされている。
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