【マナウス発】ブラジル初となる公立の日本語バイリンガル(二言語)校がアマゾナス州マナウス市に開校して1学期が過ぎた。一から日本語を始めた生徒たちは日本語での挨拶にも慣れ、学校側は「ただ日本語を習得するのではなく、日本人の価値観を身に着けてほしい」と話す。1学期の成果をのぞいてみた。
「起立」「礼」「お願いします」―。元気な日本語の挨拶と共に授業が始まった。ポルトガル語の単語の横に、「たいよう」「せいぶつけん」などの日本語が並ぶ。先日理科の授業で勉強した内容を、今度は日本語で学んでいた。
ブラジルでは珍しい全日制の「デジャウマ・ダ・クーニャ・バチスタ」校(Escola Estadual de Tempo Integral Bilíngue Professor Djalma da Cunha Batista)には、日本の中学校にあたる6~9年生計1100人ほどが通う。他の公立校と同じカリキュラムに加え、週4時間の日本語の授業や、日本語で行われる算数と理科がそれぞれ週に2時間ある。
算数と理科の授業の一部を日本語で行うことについて、オルランド・モウラ校長は、「例えば計算の答えや惑星の関係などは、どの言語で学んでも内容は変わらない。日本語に慣れ親しみ、単語数を増やすために必要」と説明する。
生徒たちには将来、マナウスフリーゾーンの日系企業や観光業などで日本語を生かした活躍が期待されている。近くに公立バイリンガル高校の設立も検討されており、そうなればアマゾナス連邦大の日本語学科を合わせ、長期的な日本語教育の場が公的に整うことになる。
モウラ校長は、「言語の習得以外に、日本人の価値観を学ぶことも大事だ」と強調する。生徒に日系人はおらず、入学時に重視するのは近くに住んでいること。学校付近は比較的貧しい地域のため、「生徒が物を大切にしたり、他人を敬ったりする日本人の姿勢を身に着けることは、子どもたちを取り巻く環境を変えることにつながる」と信じる。
季節の行事や歌といった日本文化を学ぶ時間もあり、生徒たちはすでに日本国歌も歌える。6年生のナイラ・マリアさん(11)は「日本の礼儀正しい挨拶が好き。勉強を続け、いつか日本に行ってみたい」と目を輝かせていた。
来月のリオ五輪でマナウスはサッカー日本男子代表の会場になっていることから、生徒たちが試合観戦に行くことも計画されている。(菅野麻衣子通信員)