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リオのジャパンハウスでサンバをウリにする愚

「Yogashi(洋菓子)」と書かれたエスタード紙記事

「Yogashi(洋菓子)」と書かれたエスタード紙記事

 「Yogashi」という文字を、エスタード紙6月2日付「Paladar(味覚)」別冊で見て衝撃を受けた。もちろん「洋菓子」のことだ。何に衝撃を受けたかといえば、日本人の頭の中で、それは「西洋のお菓子」のはずだ。だが「Yogashi」という言葉が示すのは、ブラジル人からすれば、それは日本人が作った西洋のお菓子という「日本文化の一分野」と見ている事実だ▼思えば、コラム子は渡伯するまでシュークリームは「洋菓子」だと思い込んでいた。当然ブラジルにもシュークリームがあると期待して探したが、いくら探しても当時はなくガッカリした。ここ10年で見るようになったが韓国系や日系の店だけだ。洋菓子の代表、ショートケーキもしかり。日本のそれのようにきめ細やかな生地、甘すぎないクリームなどは、東洋系の店以外では難しい▼明治以来、日本は「脱亜入欧」の精神で必死に西洋の技術を学び、自分のものにしてきた。西洋に縫製技術を学べば「洋服」に。「洋食」しかり。そのように日本人に取り入れられた結果、日本人は「西洋のもの」と思っていても、西洋から見ればすでに独自進化を遂げた「日本文化」になっているという厳然たる事実が、この記事によっても確認された▼これはカタカナ言葉も一緒だ。日本人の中には「英語」だと思っている人もいるが、その発音でしゃべっても通じない。しまいには「(ホテルの)フロント」「サラリーマン」など英米にない和製英語まで作ってしまう▼その現象と対極にあるのが、日本文化を取り入れたブラジルの「日系文化」だ。先日発表されたリオのジャパンハウスの概要文書を見ると、現地日系人や日系団体の姿は稀だった。日本の日本人には日系文化が何だか理解されていないのでは―と悲しくなった▼まさか日系文化はマガイモノ、現地化して劣ったニホン文化などと思っているのではないかと危惧する。もちろんレベルはピンキリだ。でも日本文化の中でブラジル人に受け入れられるものを、100年かけてゆっくりと抽出した〃精華〃が日系文化だと思う。先の県連日本祭りで17万人もの動員力があることは実証済み。日本側の認識には、その実績がまったく理解されていないことが同館プログラムに現れている▼だいたいリオのジャパンハウスの正式名称は「Tokyo 2020 JAPAN HOUSE」。ブラジルで日本を紹介する施設なのに、なぜ英語なのか首を捻る。しかも先日弊社に届いたその開幕式の招待状まで全て英語…▼同館資料を見て、さらに驚いた。イベント会場「日伯友好スペシャルステージ」ではサンバのイベントばかり。コラム子は元VaiVai打楽器隊の一員であり、日本人サンバ関係者をけなすつもりは一切ない。ただ、日本文化を広めるための館なのにサンバ中心―という方向性に疑問を呈している▼おそらく企画者は「ブラジルで日本芸能をやっても人は呼べない。大量動員できるのはサンバ」との発想が働いた気がする。なぜ県連日本祭りにあれだけ人が来るのか―というマーケティングが欠けている。時事通信3月24日付電子版によれば同館の事業運営経費は約13億円にもなる。対する県連日本祭りの予算は約300万レアル(約9700万円)だが、その半分の効果すら上げられるのか疑問だ▼「英語表記すれば国際化」「ブラジルだからサンバ」程度の認識では、日系文化の本質を理解するには程遠いのも無理はない。少なくとも世界最大の日系集団地、サンパウロ市のジャパンハウスでは同じ愚を繰り返さないでほしい。(深)

サンバばかりのイベント舞台

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