【サンパウロ、リオデジャネイロ共同=遠藤幹宜、渡辺雅弘】リオデジャネイロ五輪開幕が間近に迫ってきた。劣悪な治安、ジカ熱、準備遅れ…。不安要素ばかり指摘される中、ブラジルにある海外最大の日系社会は「祖先の故郷から来る同胞を支えたい」との熱い思いを胸に、日本人観戦客の受け入れ準備を進めている。
「今は冬なのでジカ熱はあまり心配ない。安心して応援に来てもらいたい」。最大都市サンパウロで日本移民が1939年に設立した「サンタクルス病院」の北原貴代志アメリコ医長(51)がほほ笑んだ。北原医長は日系二世だ。
サンパウロにはブラジル日系人約160万人のうち100万人が暮らす。一方、リオデジャネイロの日系社会は規模が小さい。日本国籍を持つ永住者はサンパウロの約3万8千人に対しリオは約1600人で、日本語を話す医師はほぼいない。
このため同病院は五輪と9月のパラリンピック期間中、日本語を話す日系人医師と看護師をリオの五輪公園近くにある総合病院に派遣し、常駐させることを決めた。サンタクルス病院には日本留学経験がある医師も多く、期間中、24時間態勢で日本人患者の対応に当たる。北原医長は「日本の人をできるだけサポートしたい」と強く訴える。
サンパウロの日系団体が組織する観戦者支援委員会は緊急連絡先を日本語で印字したカード約3千枚を作製、サンパウロやリオのホテルや和食店に置く。2014年のサッカー・ワールドカップ(W杯)開催時と同様、緊急対応用のボランティア通訳を用意。ブラジル最大のゲートウエー(玄関口)であるサンパウロの各県人会に緊急宿泊先も確保する予定だ。
沖縄県八重瀬町から5歳で移住した呉屋春美委員長(63)は「困った人は必ず助けたい」と話す。ブラジル経済停滞に伴い、治安は一層悪化傾向にあり「スマートフォンやカメラは狙われやすいので、極力表に出さないで」と呼び掛けている。
一方リオでは日系団体が8月1日、日本選手団の本隊を空港で出迎える計画で、地元日本人学校の生徒や保護者も参加。日の丸を振って歓迎し、花束を贈呈する。
8月14日には日系人や在留邦人が集まって女子マラソンを一緒に応援する計画だったが、テロへの懸念から断念。ただ14日夕には市内のホテルで、選手らを慰労する会合を開催する予定だ。パラリンピックでも、車いすバスケットボールを応援する計画を立てている。
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