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「原爆の日」目前に高まる戦争への足音

 今年も「原爆の日」が来る。広島は6日、長崎も9日に平和記念式典を開催する。今年は、4月にケリー米国務長官、5月にはオバマ米大統領が広島を訪問した記念すべき年で、核拡散や核兵器開発に反対する声は一段と高まるだろう▼だが、それに先立つ8月2日、安倍内閣の改造で、稲田朋美・自民党政調会長の防衛相起用と聞き、鳥肌がたった。同氏は「靖国神社は不戦の誓いをするところではなく、『何かあれば後に続きます』と誓うところ」と発言、教育体験として若者全員を自衛隊に入隊させる制度創設を提唱し、国のために命を捧げるのが「真のエリート」と言う人物だ▼聞けば、安倍首相は同氏を初の女性首相にと考えており、稲田氏も「安倍首相が一番の相談相手だ」と言っているという。稲田氏の防衛相起用に、中国や韓国は「右翼の女性政治家が防衛大臣となり、日中関係に衝撃を与えた」とか、「安全保障協力が容易でなくなるとの懸念も生じる」と伝えた▼パリ不戦条約を破って満州事変や太平洋戦争を引き起こした日本が国際的に孤立して敗戦に至った事は、戦争体験者は皆知っている。先日亡くなった大橋巨泉氏は「いかなる戦争も個人の尊厳を破壊する」とし、「戦争の出来る国」作りを画策する安倍政権を非難し続けていた。同氏の最後の望みは「安倍首相の野望を打ち壊す」事だったのに、その事を報じた番組は皆無。メディアの萎縮との声もある▼捕虜になるなら自決しろと教えた日本では、戦争になれば一般人は人間として扱われなくなると危惧した大橋氏。原爆の日は、稲田氏の防衛相起用で戦争の足音が高まらないようにと祈念する必要がありそうだ。(み)