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さらに充実『群星』第2巻=希望者に無料で配布中

高安さん、宮城さん、嶺井さん

高安さん、宮城さん、嶺井さん

 「ウチナーンチュの心」を次代に伝えるための日ポ両語の同人誌『群星(むりぶし)』第2巻が7月に発刊された。ブラジル沖縄県人移民研究塾(宮城あきら塾長)の刊行。塾有志が資金を出し合って1千部印刷され、同県人関係者の間で無料配布されている。
 巻頭言で語られた刊行動機は、次のようなもの。戦前や戦後初期移民は言語や習慣が異なる生活の中で悪戦苦闘を重ね、県人同士が懸命に助け合った。しかし、家庭内では親子の会話を十分にする時間が取れず、「言葉の問題」から徐々に親子間に溝が生まれていた。思う様に県人精神を伝えられないまま子は成人し、ブラジル社会で立派に活躍している。
 《この現実に親たちの多くは、わが子たちが遠くに離れていくかのような、あるいは彼らに置き去りにされていくかのような感覚にとらわれ、深い沈黙のままに通り過ぎてきたように思われる》(巻頭言)。それを補うために、県人移民史を掘り起し、心に残る逸話を両語で広める役割をこの同人誌は果たす。
 昨年の創刊号には多くの反響が寄せられ、今回の執筆陣には趣旨に賛同した二世が多く参加し、さらに充実した内容になっている。
 「移民群像」のコーナーでは、特定の県人向けの新聞としてはブラジル唯一のポ語月刊新聞「ウチナープレス」を経営する知念マルセロ・ヴァネッサ夫妻、ボリビアから再住した高安広治さんの涙なしには読めない体験記も掲載されている。高安さんがサンパウロ市で縫製業を始めた当初《仕事は、朝の7時から翌朝の4時まで、一日3時間しか睡眠を取らなかった。意識して身体は動いているが、脳は寝ていて、たまたま指をミシンで縫うこともあった。トイレで用をすませてそのまま寝てしまうこともあり、頭から冷や水を被って目を覚ますこともしばしば(中略)妻の節子は睡眠もろくに取れない状態だから、お乳が十分に与えられず、赤子が夜中泣き続ける事も度々あった》などの記述も。
 戦前の「奴隷同然のコロノ生活」並かそれ以上の困難が戦後にもあったことが伺われる。それを乗り越えたから、現在の成功があるようだ。
 またエスタード紙論説委員、保久原ジョルジさん(二世)の「ウチナーンチュとしての自分を再発見」は、コミュニティを離れて一般社会で地位を築いてから、父親と臣道連盟の関係を調査する中で県系精神に立ち返る自らの心の揺り戻しを告白した興味深い文章だ。
 その他178頁に渡って様々な逸話が盛られている。来社した高安さんは「今回はアルゼンチン、ボリビアなどより国際的な内容になっている」、嶺井由規(よしのり)さんも「二世の側から見たウチナー精神の影響など、ぜひ読んでほしい」と薦める。宮城塾長は「無料で贈呈している。ぜひ読んで合評会で感想を聞かせてほしい」と呼びかけた。合評会は9月20日午後5時から沖縄県人会本部で。問い合わせは宮城さん(電話11・4472・4532)まで。

 

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 ブラジル沖縄県人移民研究塾が刊行した日ポ両語の同人誌『群星』第2巻は編集部でも10部預かっている。沖縄県人でなくても、移民史の一部として重要な内容がぎっしり。編集部までとりに来てくれれば、希望者には無料配布中。ただし、先着順なのでご注意を。