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スラム街の植物を植える男=一人で30年間数千の苗生産

 リオデジャネイロ市北部のスラム街(ファヴェーラ)「ロッシャ・ミランダ」に住むジョセリーノ・ポルトさん(70)は毎朝5時に起き、冷たいシャワーを浴びた後、プラスチックのコップで育てている植物の種や苗の世話をする。
 植物の世話が終わると、リオ訛りで話すパライバ州出身のポルトさんが育てている苗の中から、グラヴィオラやグァバ、ピタンガなどを求める人からの電話が入り始める。ポルトさんは30年以上、1人で植物を育て、リオ市のスラム街に自然を戻してきた。彼を知る人々からは「オーメン・ダス・プランチーニョ(植物を植える男)」というあだ名で親しまれている。
 ポルトさんは、「私の夢は再び緑で覆われたファヴェーラを再び見ること。植物を栽培するのが好きだし、環境保護の重要性を人々に知ってもらいたい」と語った。
 2010年から非政府団体「ヴィヴァ・リオ」で働くポルトさんは、BBCブラジルに次のような文章を送っている。
 「パライバ州カンピーナ・グランデ市で生まれたが、2歳の時、私の父はサンパウロ市に家族と引っ越す事を決めた。少し経つとまた荷物を作って、今も住むこのリオデジャネイロ市に引っ越してきた。幸せな子供時代ではなかったけど、そのことは老いてから気付いた。スラム街に住み、とても貧しかったので早くから働き始めました。10歳になった頃、父に呼ばれ、もうこんな生活に旗得られないと言われた。必要な経費を払うため、学校を辞めた。働くか、空腹に耐えるかのどちらかを選ばなければならなかったんだ」と振り返った。
 ポルトさんは幼い頃から植物の世話を学んだ。日光浴や水やりなど、種類ごとに世話の仕方が違い、やることは多いが、好きな仕事だと言う。
 同市北部のロッシャ・ミランダの住居は大きくはないが、普段から約300本の植物を栽培している。6月の国際環境保護の日など、特別なキャンペーンを行う時は約2千本生産するという。肥料は使わず、食物のゴミを使用するそうだ。
 プラスチックのコップに種を植えて発芽を待つ。成長し始めたら、寄付をする。
 スラム街に植樹する活動のおかげで「植物を植える男」というあだ名が出来た。90年から始めた活動で、育てた苗は7万2千以上になるという。最初は時間つぶしのためだったが、今は生きる意味となった。孤独な作業ではあるが、樹を植えた時に人々の関係が生まれるところを見るのがポルトさんの幸せだ。
 92年、ぺドラス・プレシオーザス環境保護団体(NEPP)と呼ばれるリオ市のスラム街の環境保護についての教育を施す団体創設に加った。スラム内での水消費量の減少や環境保護のための人員200人の育成は、同団体の活動の実だ。4年後、7~11歳の子供たちのための生態学についての学校を作った。また、地区の環境保護運動「エコ・ファヴェーラ」の創設にも関わった。
 ポルトさんはゴミのたまっている場所などを通報するキャンペーンも行っており、常に小型カメラを持ち歩いている。キャンペーンに使った写真は1万点を超え、自身の活動を記録したファイルは36冊に上っている。
 ポルトさんが誇りとしていることの一つは、自分の仕事に対する子供たちの反応だ。97年にリオ市中央区のシネランジアで行った活動は今もおぼえているという。この時は1キロの食料と苗木を交換したが、持っていった300の苗木はすぐになくなった。
 ポルトさんは、「間違いなく、こどもたちは私の仕事に当局の人以上に高い評価をしてくれる。リオ市の環境局長は皆、私の家に来て、色々な約束をしてくれたが、どれも守られていない。自分の人生の目標は数少ないが、私の仕事を通して、人々が環境保護の重要性に気づいてくれることを望んでいる。日々との戦いです」と語った。(8日付グローボサイトより)