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「ソーモス・ブラジル」=104人のブラジル人の歴史

 イギリス人写真家のマーカス・リオン氏が6カ月間かけて2万2千キロを移動し、104人のブラジル人に取材した結果、「ソーモス・ブラジル」という携帯用アプリを作った。先週世界中に配信された同アプリは、複雑なブラジルの国民性を他国の人々に理解してもらう事を願って開発された。
 「愛の宣言」という企画は元々、ブラジルを紹介するポートレート作成を目的としていたが、取材旅行を重ねるうちにこのアイデアが、人々の取材とDNAの遺伝解析まで進化した。そのアイデアを全て公開するためにリオン氏が最適と判断したのが、スマートフォン用のアプリケーションだったという。
 「ソーモス・ブラジル」では、人物の写真をスマートフォンのカメラ上で指し示すと、その人に取材した時の録音記録を聞くことができるようになっている。
 ブラジル人女性と結婚し、2人の子供の父でもあるリオン氏は、「ソーモス・ブラジル」をブラジルへの愛を宣言する一つの手段と見ている。
 リオン氏の子供達はイギリス生まれに関わらず、自分たちはブラジル人だと定義しているというが、リオン氏自身は当初、ブラジル人が「自分はブラジル人」と言うだけで幸福感を味わう事ができ、自分のアイデンティティを見出すためにどこの生まれかを探す必要さえないことに驚きを感じたという。
 また、取材先で会った人々が、イギリス人の写真家が自分達に会いに来て写真を撮り、自分達の話を聞いた上、出自などに関する質問への答えを探す手伝いさえしようとしてくれていると知って心から喜んでくれる、その親密さに心地よさを覚えてきたともいう。
 リオン氏は「この企画には5年かかった」という。アプリの原点となったアイデアは写真によるポートレート作成だったが、リオン氏は国際的にも知られた「エクソダス」や「ブリックス」、「タイム・アウト」での仕事と関連付け、音声を付け加える事にした。「ソーモス・ブラジル」ではデジタル本のように、人物写真とその人の音声を聞けるようにしたいと考えた。
 音声を付けるアイデアが出た後、参加者の家系のDNAを加えるという企画を加えた。プロジェクトは、写真、音声、DNAという三つの要素で構成されている。
 リオン氏は「ブラジル国民をよりよく知ろうという試みの中で、私は自分自身を見出した。この貴重な贈り物に感謝する」という企画説明の中の一文を読んだ後、「私が本当にしたい事はより深い会話だ」と語った。
 「『私は誰?』『なぜここに居るの?』『何になれるの?』というより深い質問は、グループになれば『私達は何をしているの?』『私達が一緒になったら何になれるの?』となっていく。私自身が人々に会い、写真を撮り、彼らの歴史も調べたが、今でも彼らの話を聞きかえすと身震いする」とリオン氏は説明。画像と音声、科学を組み合わせた「ソーモス・ブラジル」が、個人やコミュニティ、アイデンティティといった部分でもたらす内面の感情の高まりや、それらを伝える効果は想像をはるかに超えているという。(8日付G1サイトより)