「膝の痛み」 1
長引いた梅雨が終わり、ようやく東京も夏を迎えました。ヒートアイランド現象で、これから寝苦しい夜が続くことでしょう。
リオ・オリンピックが開催して、ブラジルは大いに盛り上がっているようですね。
さて、今回のテーマは膝の痛みについてです。40代の半ばから膝の痛みを訴える人がチラホラと増え始め、60代になるとか多くの方が経験される変形性膝関節症。その予防と改善の仕方についてお話しします。
【膝のトラブル】
膝関節の周りには、ほとんど筋肉がないので「膝が凝る」ということありません。その代わり、関節周辺や関節内の痛み、膝全体のこわばり、膝が固まって動かせなくなってしまう「ロッキング」といったトラブルが発生します。
なかでも、「変形性膝関節症」や「半月板の損傷」、「関節水症(膝に水が溜まること)」は、加齢による問題の代表格です。
膝関節の構造と機能はシンプルであるため、レントゲンやCTスキャンなどの画像検査によって、ある程度は問題の場所を特定することができます。ですから、膝に違和感があったら、早めに受診しておいた方が良いでしょう。
ただし、湿布と痛み止めだけでは根本的な解決にはなりません。膝を痛めてしまうような姿勢と動きを止めて、膝への負担を減らすことが重要です。
【どうすると膝を痛めるのか】
どのような姿勢や動き方が、膝を痛める原因になるのか知ることは、治療方法の選択よりも価値があります。次の4つは、膝を痛める要因なので避けるように心がけて下さい。
①正座
②内股座り
③つま先よりも膝が前に出た状態でしゃがむ
④前かがみで歩く
⑤下り坂を走る
①正座は、膝関節に過度な圧をかけるだけでなく、膝下への血流を止めてしまうので、膝に最も悪い姿勢です。実際、昔の日本人は、正座をする機会が多かったため、膝のトラブルを抱えている人が大勢いました。
②女性に多くみられる内股座り。これは膝関節の内側に付着している靭帯を引き伸ばすストレスが持続的にかかるため、この座り方も良くありません。
③畳文化の日本人は、欧米人と違って膝から床につく身体文化をもっています。残念なことに、この動作が膝を壊す原因になるのです。深くしゃがむときは、膝とつま先の向きを揃えて、つま先よりも膝が前にでないように「出っ尻」にして行ってください。
④「前かがみ姿勢」のリスクについては、第6話でお話ししましたが、前かがみでの歩行は、膝へのストレスを増大させます。上体を起こして両肩を引き、踵から接地するように、ゆったりとした歩幅で歩くように心がけて下さい。
⑤下り坂を駆け下りることも膝を痛めます。感覚的には、登る方がしんどいわけですが、降るときの方が膝にかかる負担が大きいのです。これは階段も同じ。
これらの事を気つけていれば、大事な膝を長持ちさせることができるしょう。
【プロフィール】
伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身
メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。