柔道のラファエラが凱旋行進=スラムの子供達にも新たな夢
リオ五輪の柔道金メダリストのラファエラ・シウヴァ(24)が22日、リオデジャネイロ市西部のファヴェーラ(スラム)シダーデ・デ・デウス(CDD)で凱旋行進を行った。
金メダルをかけ、国旗を手にしたラファエラは消防車の上に立ち、2時間以上行進した。雨にも関わらず集まった何百人もの人々は、口々に彼女の名前を叫び、写真を撮ったり、「ラファエラはファヴェーラの金」などの言葉にメロディをつけて歌ったりした。
CDDはラファエラが生まれ、育った場所で、両親を助けるためにガスボンベを運んだ道や、子供達と共に遊んだ道を消防車が進んで行くと、住民達も拍手や花火で歓迎した。
「CDDには何もないけど、ここには金メダルがある」と言うのは、パン職人のロゼライネ・バチスタさん(39)だ。彼女はラファエラをひと目見せたいと、9歳の娘を連れて集まった。
「皆がファヴェーラは犯罪の巣窟だと言うけれど、彼女が僕に新しい希望をくれた」というのは、5年前にCDD内の教会が始めた「ルタドーレス・デ・クリスト(キリストの闘士達)」というプロジェクトに参加するガブリエリ・ペッサーニャさん(16)だ。
ガブリエリさんは自宅でブリガデイロ(チョコレート菓子の一種)を作って売り、旅費を貯めた上で、2カ月前にカリフォルニアで開かれた柔術の世界大会に参加。メダルを二つ獲得した。
だが、ガブリエリさんへの報酬はメダルだけではなかった。彼と両親、妹、いとこは、ラファエラと一緒に行進する特権に与ったのだ。
マラナタ教会のジョズエ・ブランキーニョ牧師が始めたプロジェクトでは、無料で柔術を指導する。行進直前にプロジェクトに参加する青少年と話をしたラファエラは、ジャーナリストや外国人達に「ここに来て子供達と写真を撮る事はとても大切。私もかつて、有名人の傍に立ち、その着物に触りたいと願っていたけど、その機会がなかった。子供達の傍にいるのは大好きよ。彼らは心から私を受け入れてくれるから」と語りかけた。
「19年間柔道をやってきて、皆に知られるようになった。この間までは月1回、私を探す人がいた程度だったけど、今は皆が私に会いに来る」と言うラファエラは、柔道家のフラヴィオ・カントが開設した非政府団体のレアソン研究所の近くに住むため、8歳の時、CDDを離れた。だが、同ファヴェーラの住民にとり、ラファエラは永遠にCDDの住民であり、子供達が慕い、従うべきモデルだ。
今回の凱旋行進は、ボクシングをやっていたDJのTRが友人のブルーノ・ラファエルと計画した。CDDの50年間を纏めたドキュメンタリーを創っているTRは、「ファヴェーラは常に暴力に苛まれてきた。でも、彼女の金メダルはこのファヴェーラに希望の火を点した」と言う。
その言葉を裏付けるのは、TRが1年前に立ち上げ、現在では270人に無料でボクシングとマイタイを教える「グラブの下で」というプロジェクトの参加希望者が、ラファエラの優勝後、通常の3倍に増えた事だ。
ガブリエリさんが参加する「キリストの闘士」の指導者マルシオ・デ・デウス氏も、「ラファエラが優勝した日の夜だけで10~15人の母親が訪ねてきた」と言う。
ラファエラが凱旋行進をする6時間前、CDDでは麻薬密売者と軍警の平和維持駐留部隊(UPP)の警官の間での銃撃戦が起きた。CDDのUPPは2009年に設置されたが、凱旋行進の合間にも銃を持った密売者が近くの道路に立つ様子が見られるのが実態だ。そんなファヴェーラにラファエラが点した希望の火、彼女の後に従おうとする子供達の姿は、リオ五輪の大きなレガシーのひとつといえる。(23日付エスタード紙より)