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世界からジウマ罷免に反対=映画界・音楽界が立ち上がるも

 24日、アメリカを中心としたアーティストの団体が、ジウマ大統領の罷免は「民主主義に反している」と抗議する文書を発表した。
 この文書には、映画界などの有名人22人が署名している。代表的な名前としては、大ヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング」に出演した俳優のヴィゴ・モーテンセンや、スーザン・サランドンやダニー・グローヴァーといったハリウッドのベテラン名優、オスカー作品賞受賞作「プラトーン」で知られるオリヴァー・ストーン監督の名が見られる。
 また音楽界でも、「バナナボート」が世界的にヒットした歌手ハリー・ベラフォンテや、人気バンド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのリーダーで名ギタリストのトム・モレロの名前もある。
 アメリカでは7月も、同国下院で40名を超える罷免反対署名が集められ、今月初旬には、今年の大統領選の民主党公認候補の座をヒラリー・クリントン氏と争って有名になったバーニー・サンダース上院議員が罷免反対の声明を出している。
 こうした動きは、ジウマ氏が、5月に停職処分を受ける前から国外の左翼系政党や団体に向け、「今、自分はクーデターによる罷免を受けている最中だ」と訴え続けた結果と見るべきだろう。
 だが、このニュースを報じたフォーリャ紙のフェイスブックの読者の書き込みは、国際的におなじみな人が多く名を連ねた割に冷めたものがほとんどで、「彼らが俺の生活費を払ってくれるのならいいのだけど」「22人の、ブラジルの状況を知らない有名人の見解の方がブラジル5000万人の有権者の実情より大事なのか」「彼らがブラジルに来て、1200万人の失業者を出した国の状況を見たら同じことが言えるのかな」といった発言が目立っていた。
 なお、大統領罷免の審議には9カ月を要しており、憲法通りに下院で3分の2以上の承認を得た後、上院が下院の罷免審議継続要請を承認。更に特別委員会で論議を重ねた上で、上院で弾劾裁判を行うか否かを確認する投票を行った結果、現在開催中の弾劾裁判に至っている。
 ジウマ大統領が正式に罷免されるか否かは、上院での弾劾裁判で3分の2以上の賛同を得た後に決まる。今回のジウマ大統領の罷免プロセスに関しては、最高裁にも何度となく違憲を訴える訴状が出されているが、それらはことごとく却下されている。
 また、大統領が罷免となれば副大統領が昇格するのも憲法に則っており、ジウマ氏がクーデター首謀者と訴えているテメル大統領代行をもともと副大統領として選んだのも、他ならぬジウマ氏だ。
 さらにジウマ氏が現在問われている連邦政府の粉飾会計疑惑も、14年分が財政責任法違法と判断された時点で罷免されてもおかしくないところだが、「前任期の最終年のことなので、再選後の政権には関係ないもの」との理由で命拾いをしたのに、15年も同じことを繰り返していると指摘されたために改めて訴えられたものだ。
 他にも、所属の労働者党が絡んだブラジル史上最大の汚職を摘発するラヴァ・ジャット作戦の進行や、経済の悪化、ジウマ氏の大統領選の選挙参謀が贈収賄で逮捕されるなどの問題も同時に起きている。
 なお、現在、政治犯の非人道的な扱いや議会を無視する独裁主義的な政治を批判されているベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領も、ジウマ氏の罷免に強く反対していることで有名だ。(24日付フォーリャ紙サイトなどより)