南大河州ポルト・アレグレ市の軍警学校で20、21の両日に、同日本祭り実行委員会(谷口浩実行委員長)主催の『第5回ポルト・アレグレ日本祭り』が開催された。20代の日系若者も実行委員会の中軸を支え、入植60周年をテーマとして特別資料館を設置し、初期入植者の苦労を偲んだ。暴風に見舞われ、初日は客足が伸び悩んだ。でも翌日は澄み切った青空のもと多くの来場客が訪れ大盛況となり、前年とほぼ同じ約7万人が押し寄せ、古今東西の日本文化に酔いしれた。
会場中央のメイン舞台で、舞踊や武道など60を越える演目が披露されるなか、それを囲むように設置された文化スペースでは、茶の湯、生け花、盆栽、書道、折り紙、切り絵まで多岐に渡る日本文化が紹介され、様々なワークショップを通じて、参加者は日本文化への理解を深めた。
特設舞台では、日系青年会「新星」による力強いソーラン節で会場を沸かせた。全伯公演中の中平まりこさんも登場し、サンパウロ市から駆けつけた30人以上の健康体操のメンバーとともに「イペー音頭」を披露すると、ブラジル人も次々と列に加わり、大きな輪になって日伯友好の花を咲かせた。
なかでも最も集客力を誇っていたのは、同時開催のアニメフェスタ『ANIME・BUZZ』。グッズ販売から、コスプレ、舞台でのアニメソング披露まで、ユニークなコスプレ姿の非日系人の若者で身動きがとれないほどごった返した。
イタリアやドイツ系が多く、日系人が少ない土地柄だが、日本語を学んでいるという来場者も多く散見された。非日系チアゴ・ホザ・ソウトさん(32)は、「アニメやマンガも好きだけど、日本文化はそれだけではない。日本の歴史はもっと深い」と幼少期から独学してきたという流暢な日本語で語り、「戦国時代が特に好き。神道や武士道の思想など大変素晴らしい」と目を輝かせた。
開催5年で7万人集客になった同祭。谷口実行委員長は「当初は、本当に開催できるのかと不安があった」と振り返る。同州で5千人ほどしか日系人がいないなか、各日系団体は構成委員が重複するも組織はバラバラだった。そんななか、「日系コロニアのために一緒に立ち上がろう」とポルト・アレグレ文化協会の主導で始まった。
開催3回目からは、同祭実行委員会が組織され本格的な運営体制が整えられた。土井カロリーナアヤコ(26、二世)副実行委員長は、「回を重ねるごとに得た知見を次に活かしてきた。特に地元メディアへの宣伝に力を入れ、イボチなど離れたコロニアも巻き込んできた」と言う。入場料を一キロの保存食としたのも来客を呼び込む原動力となっており、今年は巡回バスも用意された。
実行委員会の委員選任には若者が積極登用される方針で、土井さんのような若者にも大役が任されている。「副実行委員長を務めるにあたって、不安もあったが、携わるごとに自分の中で責任感が益々大きくなり、なんとか日系社会に貢献したいと思うようになった」と語る。
同青年会の梶原ルーカス隼(23、三世)副会長は、かつて当地に『日系』という親睦会があった時代が一番楽しかったといい、「副会長になったのは、日系社会で何をやっているのか全てを知りたかったから。いずれは実行委員長になって、かつての時代を蘇らせたい」と今後への強い思いを滲ませた。(つづく、大澤航平記者)
□関連コラム□大耳小耳
ポルト・アレグレ日本祭りで茶の湯体験をしたエデルソン・カンジェルさん(35)は、「茶の湯は今回が初めてだが、シマホンに似た味わいで親近感を覚えた」という。「作法に無駄がなく、実用的で何と言っても優美。日本文化は素晴らしい」と太鼓判を押した。たしかに、マテ茶などの葉をたっぷりいれたシマロンは苦味が強くて、どこか抹茶に似ている。もしかしてガウーショ(南大河州人)と茶道は相性が抜群かも。
◎
ポルトアレグレ日本祭で、切絵を販売していた有馬田津子さん(山口、69)。伝統的な絵柄のほか、色鮮やかなものやアニメキャラクターまで。理由を聞けば、「ブラジル人はわびさびを感じさせる同一色で濃淡のあるものにはあまり飛びつかない。改良を重ねて、目を引くような鮮やかな色使いにしてブラジル人向けに工夫してきた」という。かとおもえば「日本のことを正しく理解してもらいたいから譲れない部分は譲れない」とこだわりの一面をみせ、来場者に丁寧に絵柄の説明をしていた。この試行錯誤や工夫が「日本文化の普及」そのもの。