階段を下りるときと、椅子から立ち上がるときに膝の痛みを訴える人が大勢います。どちらも、ちょっとしたコツで大幅に痛みを軽減できます。
階段のステップに対して、正面を向いて下りるのが一般的ですが、これだと膝に負担が掛かってしまいます。少しだけ体を斜めに向けて下りるだけで、膝にかかる負担を大幅に軽減できます。
シニア(高齢)の方は、手すりにつかまりながら体の向きを斜めにして下りるようにしましょう。
階段を上るときも、体の向きを少し斜めにすれば、太ももにかかる負担が減って楽に上れます。転倒を恐れるあまり、頭をたらして足元を見つめながら登る人もいますが、逆に転倒リスクを高めることになります。
足元が不安な方は、アゴを引いて視線を足元に向けるようにして下さい。
椅子から立ち上がるときは、体の正面を座面の角に向けて、足を前後(スプリットスタンス)に開いて、両手で太ももを押しながら立ち上がると、驚くほど楽に立てるのです。
【腹太鼓でコアを働かせる】
最後に、「腹太鼓」の効果についてお話しします。体のどこかに痛みがあると、脳はその部分にフォーカス(焦点を当てること)して、お腹に力を入れてコア(芯、腹部)を安定させることを忘れてしまいます。
体の土台であるコアが緩んでいると、運動効率と体幹の安定性が低下し、体がグラグラして患部への負担が増すのです。
コアが安定しているときは、全身の機能と運動効率が向上するため、スムーズに動作を遂行することができます。
普段から拳で脇腹をコツコツと叩いて、コアを活性化する癖付けをしていれば、膝にサポーターを装着するよりも、膝を守る効能があることを心に留めておいて下さい。
【膝の役割】
ヒトの身体は足から頭まで積み木のように関節が積み重なった構造になっています。これをjoint by jointと呼びます。関節には可動性=mobilityと固定性=stabilityの2タイプがあり、交互に積み重なっています。固定的、安定的に機能する関節があるからこそ、ダイナミックに動かせる関節があるわけです。
体全体の骨格は、足関節 – mobility、膝関節 – stability、股関節 – mobility、腰椎 – stability、胸椎(肩甲骨) – mobility、頸椎 – stability、上位頸椎 – mobilityという構造になっています。
実によくできていますよね。
【プロフィール】
伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身
メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。