9月2日付のサンパウロの有力紙、フォーリャ紙とエスタード紙は、同じ記事を使った特別な表紙を一番外側に被せた。そこには「麻薬王、パブロ・エスコバル脱獄。コロンビアに激震」と書かれている。だが、よく読んでみると、この記事は1992年7月の記事だ。
つまりこれは、両紙が24年前に実際に掲載した新聞記事を使った広告だ。ここで宣伝されたのは、全世界的な映画やドラマの配信サービス「ネットフリックス」で、この日から配信がはじまる人気ドラマ「ナルコス」の第2シーズンだ。
「ネットフリックス」は、ブラジルでは特に人気の高いサービスで、サンパウロ市内の主要駅の壁面に大きな広告が頻繁に使われるほどの大手企業なのだが、その中でも「ナルコス」はブラジル市場にとって特別に重要な作品だ。なぜなら、このドラマの主人公、パブロ・エスコバルを演じるのがブラジルのトップ俳優のヴァギネル・モウラで、監督を務めるのが、ヴァギネルが主役を務め、世界的に話題となったブラジル史上屈指の大ヒット映画「エリート・スクワッド」で知られるジョゼ・パジーリャだからだ。
このドラマは、コロンビアに実在した麻薬王を主役にした話だが、放送そのものは各国用に字幕がつけられており、全世界の人が楽しむことができる。また、コロンビア人をブラジル人が演じることも通常なら違和感があるが、訓練を重ねたというヴァギネルの流暢なスペイン語で違和感のないものとなっている。
さらに、役作りのために体重を増量するなど、この役に並ならぬ意欲で臨んだヴァギネルは、第1シーズンでの好評を受け、今年1月のエミー賞のテレビ部門の主演男優賞にノミネートされた。
ネットフリックスとしては、第2シーズンがさらなる成功を遂げるべく、史実をもとにしたドラマである特性をいかして、このような派手な広告展開に出た、というわけだ。特にエスタード紙の場合は新聞4頁分をすべて、パブロ・エスコバルに関する記事と「ナルコス」のポスターにあてるという懲りようだ。
この「実在の新聞記事を利用した広告」という展開が、今後もブラジルや他の国々でも使われるかにも注目したい。