ロドリゴ・ジャノー連邦検察庁長官が最高裁に対し、妊婦がジカ熱に罹患した場合の中絶を法的に容認する意見書を提出した。8日付エスタード紙などが報じている。
ブラジルの場合、中絶が合法とされているのは、胎児が無脳症と診断された場合と妊婦が死ぬ危険性が高い場合、強姦による妊娠の場合のみで、ジカ熱による小頭症はその範疇には入らない。
だがジャノー長官は、全国公選弁護人協会(Anadep)による、ジカ熱に感染した中絶を認めるようにとの訴えを受けて、中絶に賛成するとの意見書を提出した。
ジャノー長官がこのような判断を行ったのは、「ジカ熱に感染した妊婦にとり、小頭症の子供が生まれるかも知れないという苦悩は精神的な健康状態を損なわせる可能性が強く、この苦痛を和らげる必要がある」という理由によるものだ。同長官は、「やむをえない事情での中絶に応じる施設がなかったり中絶を拒否したりすることで母親の死や精神的な病を誘発すれば、母親の生存権や安全保障権を侵すことにつながる」としている。
この見解は、国家総弁護庁(AGU)の見解とは大きく異なる。AGUは、誕生後の生存率が極めて低い無脳症と、神経系に強いダメージを与えるものの生存率が低いわけではない小頭症とでは事情が違うとし、「胎児の生存権」を強く重視する見解を出している。
ブラジルのジカ熱患者は7月8日現在で約7万8千人と報告されている。小頭症については8月20日現在、9091人の小頭症児が誕生したとされている。そのうちの2968件は現在も調査中だが、残りの6123件については、1845件が母親のジカ熱感染が原因の小頭症と診断された。
ブラジルでは中絶が認められている場合も手術実施は妊娠初期に限られており、妊娠第2期を超えないと小頭症か否かの判断がつかないジカ熱の場合は中絶は困難だ。
だが、ジカ熱による小頭症は南米全体や米国にまで拡大しており、ブラジルだけの問題でもない。