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ブラジル文学アカデミー訪問=日系人作家協会がリオ本部へ=19人が異例の団体招待で

玄関で記念撮影する作家協会の関係者

玄関で記念撮影する作家協会の関係者

 【リオ発=小倉祐貴記者】昨年3月に発足したブラジル日系人作家協会(Academia Nipo-Brasileira de Letras)の19人が先月26日午後、文学界で最も権威のある「ブラジル文学アカデミー」の招待を受け、リオの同本部を訪れた。同施設に足を踏み入れた日系人は少なく、団体での招待はさらに異例の出来事といえそうだ。

 同協会は、精神科医の故千葉勇さんが中心になって呼びかけたもの。ベストセラー作家だったが、日系社会との関わりが薄かったため、「コロニアへの貢献」との思いで作家仲間と立ち上げようとした。
 ところが、2015年3月の設立会合の直前、千葉さんはガンを患い入院してしまった。そのためサンパウロ州サントアンドレ市の元文化局長の高良アレシャンドレさんを代表に据えて始動。千葉さんは同年8月に他界したが、同志が彼の意志を引き継いで活動している。
 今回のアカデミー訪問は、設立初期メンバーの弁護士・知念明さんが、同アカデミーへ2冊の著書を寄贈した際、作家協会の活動を伝えたことがきっかけ。1年ほど前に正式な招待を受けた。
 19人の会員らは8月26日早朝、サンパウロ市を出発した。リオ本部では、応接担当職員が出迎えた。月、水、金曜午後に来客対応の時間帯を設け、学校の社会見学にも応じているが、「20人もの団体来訪は特別」と話し、同作家協会を歓迎した。
 撮影禁止の室内には創立会員の顔写真が並べられ、小説家マッシャード・デ・アシスの書斎を再現した部屋には、実際に使用した万年筆などの仕事道具が展示されていた。現在も式典などで使用される貴賓室や役員らが集る会議室、多数の蔵書をおさめる図書室にも案内された。

西洋の衣装を身にまとい、寸劇で創立経緯を再現する案内人。奥には創立者の一人、アシスの銅像が飾られている

西洋の衣装を身にまとい、寸劇で創立経緯を再現する案内人。奥には創立者の一人、アシスの銅像が飾られている

 ガイドは粋な演出で進められた。アカデミー創立当時(1897年)の衣装で4人の役者が登場。アシスらが会を創設した経緯を寸劇で再現。「コンピューターもない時代。文学は一つの娯楽でした」といった口上で、会の成り立ちや入会条件を各所ごとに説明。歴代会員が綴った詩を、ギターの調べに乗せて歌う場面もあった。
 訪問を終えた知念さんは「特別な接待に感謝。我々もアシスのように高みを目指さなければ」と刺激を受けた様子。宮村さんも「日系文学界の裾野を広げるため、ブラジル社会の権威ある団体と交流することは重要。他の業界もそんな接触を試みてほしい」と話した。