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安楽死とパラリンピック

 リオで開催中のパラリンピックの車椅子陸上女子400メートル銀メダリスト、マリーケ・フェルフルト氏(37、ベルギー)が11日、安楽死の許可を得た経緯などを明らかにし、「大会直後に安楽死する」との欧州で流れた報道を否定した▼脊椎の病気で10代半ばで下半身不随となり、激痛や発作に苦しみながら、ロンドン大会で金、銀各1個を獲得。今大会でも眠れないほどの痛みと闘いつつ銀メダルに輝き、大会後は引退する予定だ。同国は02年に安楽死を合法化。同氏も08年に安楽死を申請し、許可を得た。「自分の人生を自分で決められるから、今はより平安だ」と言う同氏は、大会後すぐに死ぬつもりはなく、外国旅行なども行うという▼安楽死は世界中で世論が分かれ、パラリンピック精神に反すると論じた人もいる。だが、同氏の安楽死許可は複数の医師が治癒は不能と証明後、本人の意思での申請である事を精神科医が認めた上で出たもの。適用前には再度、精神科医の診断を必要とする▼今大会に参加しているブラジル女子水泳選手の一人は、12年前に進行性の難病と診断され、家族とも別れて水泳に取り組んだ結果、数年といわれた命を今も永らえている。機能障害は進み、競技上のカテゴリーも変わった。だが、大会直前に、夫と暮らす娘から「お母さんの夢は私達の夢でもあるのよ」と言われ、難病と闘うために水泳を選んだ事を誇りに思っているという▼彼女が安楽死についてどのように考えているかは知らない。だが、自分の苦しむ姿を見る家族の事も考え、家族との対話後に出したフェルフルト氏の結論とその適用は、彼女の人格同様に尊重されるべきだと思う。(み)