サンパウロ青年図書館とニッケイ新聞は12日、『日本文化(Cultura Japonesa)』の第3巻を刊行した。同書は毎週土曜日に好評掲載中の「国際派日本人養成講座」の内容を中心に日本独自の精神性や文化、歴史を紹介している。今回は全8編を収録した。
企業の創設に焦点を当てた【日本の企業文化】では、日本自動車産業の生みの親とも言える、豊田喜一郎を取り上げた。米国の経済的植民地になることを危惧し、国産車作りという夢を粘り強く実現したトヨタ自動車の創業者。その姿は現在のブラジルも見習うべき点がある。
「本田宗一郎と藤沢武夫の夢追い人生」、「稲盛和夫 世のため人のための経営哲学」も収録。戦後の町工場から、世界のホンダと呼ばれるまでの過程に、どんな思想があったのか。
また稲盛哲学について、「従業員の物心両面の幸福を追求する」という思想を探求。3者のみせる愛国心、技術の追求、求道精神は日本人の特質ともいえる。
【日本の政治文化】では恩田杢と杉原千畝を取り上げた。財政破綻した松代藩で、改革を遂げた江戸時代の敏腕政治家、恩田。民衆の模範となるべく、自らの生活を率先して切り詰め、腐敗からの決別を宣言した彼の精神は、今のブラジルにこそ必要だ。
杉原千畝は第2次大戦前夜の東欧リトアニアで、自らの外交官生命をかけて人道主義を貫いた人物。ユダヤ人の生命を救うべく、〃命のビザ〃を発給し続けた彼の功績を読み解く。
人作りは国作り――。そんな思想を持つ長岡藩士、小林虎三郎は「米百俵」の逸話で有名だ。ブラジルで言えば「フェイジョン1トン」。支援食をもとに、「食えないから学校を建てる」との発想の下、何よりも教育に投資が必要だと説いた。「W杯や五輪施設より、何よりも教育への投資が必要ではないか」。【日本の教育文化】では当地読者に、そう感じさせる日本の特質的な逸話を掲載した。
続いて現代言葉に意訳した教育勅語を特別収録。「朕椎うに…」から始まる有名な文章を、平易に理解できるように直した。明治時代に記されたものだが、「両親に感謝しよう」「友達は大切にしよう」とする内容は、現代にも通用する普遍的な価値観だと分かる。
【移民の歴史コーナー】ではリオ五輪を記念して、マリリア出身の競泳選手、岡本哲夫について紹介する。ブラジル水泳界ばかりでなく、日系人としても五輪初メダルをもたらした雄。1952年ヘルシンキ五輪では、日本人の血を引く岡本ら3人が、表彰台を独占した――。
『日本文化第3巻』では、以上の8編が振り仮名付きの日本語と、ポ語訳で掲載されている。全192ページ、価格は40レアル。日本語が苦手な子や孫、仕事場のブラジル人同僚らへのプレゼントにぜひ。太陽堂、フォノマギ竹内書店、高野書店、日本語センターなどから購入できる。
問い合わせは本紙編集部(11・3340・6060)まで。
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