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デカセギ現状分析を報告=CIATEコラボ会議=(上)=「最大の問題は子弟教育」

講演する海外日系人協会の田中克之理事長(昨年10月の海外日系人大会で撮影)

講演する海外日系人協会の田中克之理事長(昨年10月の海外日系人大会で撮影)

 CIATE(国外就労情報援護センター、二宮正人理事長)は10、11日、『2016年度CIATEコラボラドーレス会議』をサンパウロ市の文協貴賓室で開催した。デカセギ現象にまつわる諸問題を日伯の専門家が多様な視点から分析し、その結果を報告するもの。今年のテーマは「日本で働く日系ブラジル人労働者のこれから―新たな展望」。

 同会議のために日本からは田中克之海外日系人協会理事長、尾崎正利青森中央学院大学教授、室橋剛市原学園長、大西康之厚生労働省職業安定局次長、島村暁代信州大学准教授、堀坂浩太郎上智大学名誉教授らが来伯した。10日の開会式では、田中理事長から会議の前提知識となる在日ブラジル人の現状について説明があった。
 昨年末現在の在日ブラジル人数は約17万人、うち約63%が「永住者」資格を持つ。昨年のブラジル人労働者数は約9万6千人で、08年のリーマンショック以降減少傾向だったものが、初めて前年比増に転じた潮目だった。
 田中理事長によれば、在日ブラジル人の抱える問題は①安定しない雇用、②貧弱な住環境、③低い健康保険・年金の加入率、④日本語能力不足から来る劣悪な子弟の教育環境、⑤周辺の日本人住民との関係の5点。中でも②③については「改善がみられる」という。
 14年に浜松市で行われた調査(日本人市民及び外国人市民の意識実態調査報告書)によれば、持ち家率が25%まで伸び、健康保険未加入率が8%まで減少した。年金加入率も55%まで上昇している。この変化は永住者の割合増に由来していると考えられる。
 ①は、日本経済が持ち直していることから、失業率や収入の点で改善が見られる。だが間接雇用やアルバイトが雇用の半分以上を占めており、雇用形態の基本的な改善は見られない。
 ④⑤は依然非常に困難な状況。④については、2014年の浜松市の調査で「6~14歳の学齢児童の内、約6割が日本の小中学校に通っており、約1割が外国人学校に通っている(不就学児童は0)」という結果が出ており、「3分の1が不就学」と言われていた頃に比べ改善。「しかし、この結果は在日ブラジル人への施策が活発な浜松市でのことであり、全国的な状況はもっと悪いと予想される」とも。
 14年に文科省が公立小中学校に通っている外国人生徒におこなった調査では、「ポ語を母語とする約8300人の生徒が日本語指導を必要としている」との結果も出ている。これは日本語での授業についていけない生徒の多さを示しているものであり、早急に取り組むべき深刻な課題だ。
 ⑤については、15年以上日本に住むブラジル人が全体の半数に達しようとしている今日だが、前述の浜松市の調査によれば、付近に外国人住民が多いとする日本人住民の内、「親しく付き合っている」が5%、「挨拶する程度」が約3割、「全く無い、殆ど無い」が約6割。「共存協力関係が進展していないことが伺われる」とする。
 在日ブラジル人の犯罪に関しては「減少傾向にあるが、窃盗で検挙される外国籍少年の中でブラジル籍者が最も多い状況」。日本語が出来ないために学校へ行かず不法行為に走っている者が多いと考えられ、「親の子弟教育に対する理解」と「日本語能力の向上」が必要だとした。
 最後に「最大の問題は子弟教育だと思う。日本に長期滞在、永住する方はどうしたら自分の子供へ良い教育を与えられるかを考えて欲しい」「日本側はどうすれば在日外国人の力を最大限に引き出せるかを考える必要がある」と訴えた。(つづく、石川達也記者)


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 生長の家全国大会では参加者の気分を盛り上げるための音楽演出が工夫されていた。地方支部の代表者が入場する場面では、某有名海賊映画の勇壮なテーマソングが流れる中、威儀を正した代表団が凛々しく登場。一転して、本部講師の講話が始まる前には、映画「戦場のメリークリスマス」の主題歌がしっとりと流れ、聴衆の心を神妙に落ち着かせ、聞く態勢を整わせていた。県人会などの日系団体の式典では、挨拶中心でついつい単調になりがち。大切な式典であればあるほど、生長の家にならって、若者も参加したくなる色々な演出を工夫してみては?