米国ニューヨークで20日に開かれた国連総会に出席し、開会演説を行ったミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)は、世界の抱える諸問題へのブラジルの立場を表明すると共に、「ジウマ前大統領(労働者党・PT)の罷免は全て憲法にのっとった正当な手続きだった」と主張したと21日付現地各紙が報じた。
同大統領は現在進行中の汚職事件の調査にも触れ、ブラジルは政治システムの浄化の過程にあるとし、「ジウマ前大統領の罷免は憲法を遵守して行われた。独立した司法権なしに民主主義は存在し得ない。司法権の前には大統領、元大統領といえども追及を免れない」と語った。
全体で20分に及んだ演説の中で、大統領が国内事情に触れたのはわずかな部分に過ぎず、その多くは国際問題への自国の立場を表明する事と外交方針についての説明に費やされた。
行きすぎたナショナリズム、排外主義、民衆扇動政治を批判し、主に農業部門で各国の保護貿易主義を批判した。
また、テロリズム、シリア内戦、難民問題を例に、世界が直面している新たな現実への国連の脆弱さを批判し、「国連は世界で表出している諸問題に対し、後追いで対処して責任者を罰したり、制裁する組織に留まるべきではなく、諸問題の防止や抜本的解決に率先して取り組む組織になるべきだ」と述べた。
また、地球環境問題にも触れ、「ブラジルは地球環境問題において、国際社会と固い約束を結んでいると認識している。現在の繁栄のために、人類の将来を犠牲にすることは許されない。地球はたった一つ、失敗したら代替案というわけにはいかない」と語った。
大統領関係筋は、前政権との外交方針を大きく転換するために今回の演説を利用する意図はなかったとし、主な意図は「ブラジルが国際社会をどのように見ており、どのように関わっていくかを表明する事だった」としている。
これはジウマ前大統領が国連演説で、自国の内政問題を過分に盛り込み、政権のPRに利用してきたのとは対照的だ。