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1992年サンパウロ囚人虐殺事件=サンパウロ州高裁が警察の有罪取り消し命令=111人殺害は虐殺か職務執行か

一審の74人軍警有罪判決を無効としたサンパウロ州高裁の様子(Rovena Rosa/Agencia Brasil)

一審の74人軍警有罪判決を無効としたサンパウロ州高裁の様子(Rovena Rosa/Agencia Brasil)

 サンパウロ州高等裁判所第4刑事法廷は27日、1992年にサンパウロ市カランジル刑務所第9棟で発生した暴動を鎮圧する際、111人の囚人を虐殺したとされる74人の軍警への有罪判決を取り消す命令を下したと28日付現地各紙が報じた。検察側はすでに最高裁へ上告の意向を示している。
 74人の軍警らは、第一審の陪審員裁判で有罪判決を受けていた。量刑には禁固48年から624年と幅があったが、控訴審係争中だったため、実際に禁固刑を受けた者は1人もいない。
 判決を下した3人の判事の内、2人の判断は「一審判決は無効だが、被告の無罪は認めない」だった。しかし1人は「一審判決無効の上、被告全員無罪」だった。
 今後、日時は未定ながら、さらに2人の判事が判決に加わる。その2人が「一審判決無効、さらに被告人無罪」の判断を下せば74人の軍警は無罪となる。
 「一審判決無効の上、被告無罪」と判断した、元サンパウロ州高裁長官のイヴァン・サルトーリ判事は「74人の被告が囚人を殺害したことは否定しないが、虐殺ではなかった。あったのは公的職務の執行と正当防衛にすぎない。私の判断はマスコミや、殺された囚人の無念を訴える人権擁護団体には左右されない。私の良心の行く先を決められるのは私だけ」と語った。
 カミーロ・レリス、エジソン・ブランドン両判事は、一審の陪審判決無効こそ支持したものの、74人の軍警の無罪に関しては、サルトーリ判事とは判断を異にした。
 74人の軍警らの弁護人達は証拠不十分として一審判決無効を訴えてきた。さらに、同事件で一旦禁固632年の刑を受けるも、後に公務執行、および正当防衛だったとして、無罪判決を受けた故ウビラタン・ギマラエス大佐の例を持ち出して無罪も主張していた。
 サンパウロ総合大学(USP)法学部教授のアントニオ・ゴメス・フィーリョ氏は、「一審の陪審裁で有罪判決が出た場合、高裁はそれを逆転無罪にすることはできない。高裁は、一審判決が証拠に基づいていないか、一審の判決手続きに誤りがあると判断した際に、一審判決を無効の上、被告を新たな裁判に送る事が出来るのみ」と語っている。