9月30日午前、サンパウロ市南部にある、イビラプエラ公園前の巨大彫像「バンデイラス像」が3色のペンキで落書される不祥事が起きた。
犯行は30日の夜明けと共に気付かれており、29日の深夜から30日の未明にかけて行われたと見られている。
また、同じく南部サントアマーロにあるボルバ・ガト像でも、同様の落書がなされていた。
バンデイラス像は1921年に発注され、サンパウロ市の市政400周年を記念し、1954年にイビラプエラ公園と共に落成。全長50メートルで高さ16メートル、重さ50トンの花崗岩を240個も使って造った巨大な建造物だ。サンパウロ市民なら誰もが知っている像は、サンパウロ市の観光名所のひとつにもなっている。
この彫像は、ブラジルの奥地開発、植民から建国に至るまでの数百年を支えた移民(バンデイランテス)たちの功績を称えたもので、歴史的な由緒もあるものだ。今回の事件を日本に喩えると、京都の寺社が落書被害に遭うのに近いニュアンスのものといえる。
このバンデイラス彫像は、20世紀前半のブラジルを代表したイタリア系ブラジル人の彫刻家ヴィットール・ブレシェレット(1894―1955)が、35年近い時間をかけて作り上げた大作だ。同氏の名を冠し、現在も同彫像を管理する財団は、今回の事件に関し「当惑しているし、憤りも感じている」と答えている。
また、ボルバ・ガト像のモデルとなったマヌエル・デ・ボルバ・ガトは17世紀に実在したサンパウロ伝説のバンデイランテで、歴史上のヒーローのひとりだ。
30日夕方の時点でも犯人はまだ特定できていないが、サンパウロ市は早朝から特殊な溶剤を使い、二つの像の清掃にあたっている。
ブラジルはこの2日後に全国市長選を控えているが、ブラジルでは8月末にジウマ前大統領が罷免処分を受け、ミシェル・テメル大統領に対する抗議デモが続いているため、今回の落書もなんらかのつながりがあるのではと見る声も出ているようだ。(9月30日付G1サイトなどより)