在伯日系人三、四世を対象とする日本に関する包括的な意識調査を、CIATE(国外就労情報援護センター)が行なった。調査は4~8月、大サンパウロ市圏の若者511人、男女約半数ずつに実施された。デカセギ現象について意見交換する、先月11日のコラボラドーレス会議(CIATE主催)で報告された。自由記入欄には、四世ビザ解禁を求める声もあり、回答者の身の回りには、訪日就労したい四世が多数以上いることも分かった。
回答者の約7割が三世、約2割が四世。年齢別では全体の約7割が36歳以下だった。調査結果からは日本での就労意欲や動機、学歴や日本語の理解率などが分かり、日系新世代の実像が浮かび上がった。
日本語の理解については、筆記読解分野で約2割の「全く出来ない」に対し、約7割が「ひらがな」「カタカナ」を理解。約25%が「漢字まで分かる」と回答した。
会話分野では3割が「全く出来ない」としたが、基礎レベルが46・6%、中級が27・4%、上級が7・8%だった。「将来役に立つと思う第2言語は」の設問には英語に票が集中し以下、日中西語が並んだ。
「専門的な技術知識を持っているか」の問いには、約6割が「持っている」と回答。「持っている」と答えた者の中から、日本での就労意欲について聞くと、「専門分野で働きたい」が約54%、「専門分野以外でも」が約46%だった。
また回答者の身の回りに「日本で働きたい四世の親戚や知人がいる」と半数以上が答え、「いるが、働きたいとは思っていない」は15・5%にとどまった。回答者本人が四世の場合で「意欲はない」が3・3%に対し、17%が「意欲がある」と答え大きく上回った。
「日本のどの分野に魅力を感じるか」(複数回答可)には、技術力が76・3%で1位、食べ物が73・2%、観光が68・1%と続いた。「関心が無い」と答えたのは、全体の0・6%で3人のみだった。
「日本のどの産業分野で働きたいか」(複数回答可)に対しては、電子に27・2%、食品に22・3%、情報技術に21・7%、自動車に19・4%が集まった。日本での起業には4分の1が関心を持ち、その内35・4%がサービス業、23・6%がその他、15%が輸入業と答えた。
「日本に行きたい、戻りたい理由は?」(複数回答可)に対しては、観光が48・3%で1位。続いて専門能力開発、文化交流、研究、貯蓄となった。
反対に「日本に行きたくないと思わせる要因は」に対しては、1位が自然災害で49・9%、2位が差別で28・2%、3位が言語の壁で27・2%となった。
「東京五輪にどう関わりたいか」という設問も用意され、7割以上が文化交流やボランティアとして働くことに関心を示した。
自由記入欄には、「日本にまた戻りたい。四世にもビザを解禁してほしい」や、「日本の伝統文化を捨てていない四世もいる。曾祖父母が語っていた日本を体験できる機会を望む」、「私の夢は日本に行くこと。全ての四世が、ドキドキしながら許可が出るのを待っている」と、四世のビザ解禁を待つ声も挙がった。
結果を通じ三世以下であっても観光、就労両面で、日本への関心が依然として高いことが分かる。訪日就労について2、30代の若い世代は、技術力などに関心を示し、単純労働中心のいわゆるデカセギではなく、専門分野での活躍やキャリアアップを希望する傾向も見られた。
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CIATEによる日系人調査でも明らかになったように、四世も訪日就労を希望しており、ビザ解禁を待っている状態だ。ただ日本側には、当地の思いがあまり伝わっていないよう。来伯する厚労省の関係者や、外国人労働者問題を扱う教授などに同案件を持ちかけても、ピンとくる人がいないらしい。月末の海外日系人大会では呉屋春美文協会長が講演を行うが、四世ビザについて触れる可能性も。日本に向けて、こうした継続的な問題提起がもっと必要かも。