【既報関連】下院特別委員会で6日に承認された、公費歳出上限を定めた憲法改正案(=PEC do Teto、歳出上限法と略)が、週明けの10日、下院本会議で採決にかけられ、賛成366票、反対111票、棄権2票の大差で承認されたと、11日付伯字各紙が報じた。
エンリケ・メイレレス財相は採決前に滞在先の米国ニューヨークで10日、「上限法が承認されなかったら、当然次善の策を考えねばならないが、それはブラジルにとって上限法よりもずっと厳しい道(増税)になるだろう。承認が今取りうる最良の方策だ」と語っていた。
この歳出上限法は、17年の歳出は2%の上昇だが、その後はインフレ率以上には歳出を増やせない上限を設けることで「事実上の凍結」とするもの。00年から15年までは国家歳出はインフレ率プラス6%のペースで増え続け、インフレ傾向を助長してきた。それにフタをするものだ。
上限案の有効期限は今後20年。政府は段階的に赤字額を減らしていき、2019年に黒字化して負債を減らしていく。10年後の2026年に国民1人当たりの国庫歳出は13年と同等になる。同法の有効期限の折り返しとなる同年以降、政権ごとに内容が見直される。
ただし、上限案の教育と医療分野には、他の分野に比べて条件の緩和が特別に認められた。
上限案は財政改革のために必要不可欠と考えるテメル大統領(民主運動党・PMDB)は、採決直前まで努力を惜しまなかった。同大統領は採決前夜に215人を超す連立与党議員を夕食会に招き、決起集会を行ったのみならず、本会議当日には3閣僚を一時的に解任し、下議の立場に戻し賛成票を投じさせた後に閣僚に戻す力技も使った。
その結果、承認には全下議513人の5分の3、308票以上の賛成票が必要だったところ、7割を超える366票の賛成を得た。承認後、テメル大統領は、「下院1回目の投票で366票の賛成だったことは、議会が国家財政健全化への強い決意を示した事に他ならない」との声明を発表した。
上限案は上院での審議に移る前に、下院でもう一度、承認される必要がある。政府は次の下院採決を今月最終週に行うことを目論んでいる。しかし、野党側もPECの条文、審議、採決手続き全てを精査し、違法性を司法に訴える事が予想されている。